「ん……んちゅ……んふぅ……」  ぴちゅっ、ちゅるる、じゅっ、ちゅぅぅ……  鼻に掛かった吐息と粘ついた水音がこの部屋に響き出して、かれこれ10分ほどになる。 (確かに、できるだけエロくって言ったけどなー……)  舌と唇を愛撫される甘い感触を味わいながら、シンタローは頭の隅で思う。  ぢゅううううぅぅっ!  一際強く舌が吸い出された。長いシンタローの舌を、ふっくらとした唇が締め付け、そっと添えられた歯がしごき上げ、先端をちろちろと舐めくすぐられる。 「んふっ! ふ、んぷ、んんんっ……!」  既にキスというよりフェラチオじゃないか、これは。舌からじぃんと甘い快感が響き、自分の中心が硬化して行くのがいやでも分かる。 (こいつも、欲求不満だったって事かなー……)  薄目を開け、3cmほどの近距離でシンタローの舌と唇に『奉仕』するミヤギの顔を見る。近すぎて焦点が合わないが、紅潮した頬と閉じた目がぼんやり見えた。すんと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。汗をかいている。ミヤギの汗は独特の匂いがする。甘いというか、蠱惑的というか…… (感じてやんの)  唇を含め、口の粘膜というのは敏感な部位だ。それをこれだけ酷使すれば感じて当然だろう。特にミヤギの唇は敏感だ。そういうふうに仕込んだ。キスだけ、フェラチオさせるだけで達するように、十年かけて育て上げた。  その唇を使ってのこんなにも長いキス。溺れてる。ちょっと嬉しくなった。ミヤギも勃起してるかどうか確かめたかったが、手を伸ばすのは控えた。もっと焦らしたい。 「んぷぁ……ふああ……」  12分28秒。ようやくミヤギの唇が離れた。二人の口臭が交じり合った濃密な二酸化炭素がむわっと広がる。鼻をくすぐる熟し切った果実のような匂い。こいつ、なんでこんないい匂いするんだろ。  ミヤギは熱に浮かされた目で、シンタローをじっと見つめていた。明らかに欲情している。それはこっちも同じだが。目を見るだけで『犯してほしい』と伝わってくる。  二人の唇はよだれで濡れそぼっていた。特に覆いかぶさられていたシンタローは、首を通り越し襟元まで唾液が垂れていた。無造作にそれを拭おうとすると、ミヤギの手が伸び、ハンカチでそっとふき取ってくる。大きな水滴は唇で吸い取り、残った水分は柔らかな布で撫でさするようにふき取る。これはまだ愛撫の続きだ。顔の周辺に奉仕される心地よさ。最後、軽く唇をついばまれた。そしてあの目。今すぐにでも犯してくれと懇願してくる目。 (こいつ、そんなに俺が好きかね)  ゾクゾクする。もっと求めさせたくてたまらなくなる。 「あの……スンタロー……こんなんで……」 「んー。気持ち良かったぜ、ありがとうなミヤギちゃん」  そう言って軽く額にキスする。ただでさえ赤い頬をさらに紅潮させ、ミヤギがうつむいた。  疲れたから、ちゅーして癒して。できるだけエロいやつね。  冗談のつもりだった。いつものようにセクハラだと怒る姿を見たかった。だというのに、こんなにも淫猥な口づけをされては……  もっと苛めてやるしかない。 「それにしてもあれだなー、ミヤギちゃんはエッチだなー。こ〜んなエロいベロチューするなんてなー」 「なっ……! 違うべ、スンタローが、その、え、エロいのすれっていうから!」  数え切れぬほど体を重ねたというのに、いまだに生娘のような反応をする。もはやこれは、生来持っている男の誘い方だろう。 「へー、ミヤギちゃんにとってエロいキスって、こういうのなんだ。人の舌をチンポみてえに吸ってしゃぶったり、唇同士でくにゅくにゅこすりあったり、歯茎なめ回したりするようなのが、エロいキスなんだー」 「だ、だから、それはスンタローが……して、くれた……その……」  そうだ。ミヤギが行ったキスは、全部シンタローが教えてやったものが。息ができなくなるほど深く唇を合わせ、腰が抜けるほど粘膜で粘膜を愛撫する。口づけからベッドでの反応一つに至るまで、全部シンタローが教え込んだ。すべて自分好みになるように。だからこそ今のミヤギは、なにもせずともシンタローの劣情を刺激してくる。立ち居振る舞いの全てが、シンタローの性玩具……『恋人』であることを前提としている。  最高だ。頭がくらくらしそうだ。 「気持ちよかっただろ?」  こくん、と頷く。 「俺もミヤギちゃんにキスしてる時、気持ちよかったんだぜ? ミヤギちゃんの狭い口マンコの中に、舌チンポ突っ込んでずぽずぽ出し入れして、すげー気持ちよかった」  わざと卑猥な言葉を使ってやると、ますますミヤギは頬を火照らせ甘い体臭を醸し出す。欲情すればするほど体臭が甘くなる。こいつとセックスしないで誰とするんだ。 「ミヤギちゃんとキスするたんびに、バッキバキに勃起してさ。痛いくらいでさ。ミヤギちゃんは? どう?」 「どう……って……」  もぞりと体をよじらせる。椅子に座ったシンタローの膝に跨がってるミヤギの股間は、シンタローの視点からは上着の陰になってどうなってるのか分かりにくい。  その腰、というか尻に手を回して、ぐっと下向きに引き寄せる。 「あっ……!」  股間同士が密着する。何重もの布越しにミヤギのそれが熱く固くなってるのが分かった。 「ほら、やっぱミヤギちゃんもガッチガチじゃん」 「いやっ……! だって、あげなことしたら……あ、やだ、バカッ! スンタロ、やめっ……」  腰を強く押し付け、揺さぶる。布越しに勃起したペニス同士がこすり合う。直接ではない分、もどかしく腰にうずく快感。  小さく形のいいミヤギの尻はシンタローの手にしっくりと馴染む。それを縦横に揺さぶって、ゴリゴリとこすり合わせる。 「ん? どう? 気持ちいいだろ?」 「あっ、あ……だめ、や、あぁっ……」  その内、ミヤギが自分で腰を動かすようになって来る。当然だ。ミヤギがシンタローの与える快楽を拒否できる訳がない。ぎゅっとシンタローの背に手を回し、もどかしい悦楽に没頭する。 「ああ、あっ……これっ、あっ……あ、いぃっ……」  その間もミヤギの尻から手は離さない。『シンタローにされている』というシチュエーションが、ミヤギのスイッチだからだ。ミヤギはシンタローの前以外では、ここまで淫らにならない。それじゃただの淫乱だ。『シンタローにされている』というのが、ミヤギの内側にある淫蕩さの引き金になる。自分にだけ。自分にだけ見せる痴態。  でも、まだだ。まだ足りない。  手の中のミヤギの尻を丸く撫でさする。 「ひゃあっ!? や、変な触り方すんなぁ!」 「ミヤギちゃんのお尻ってさ、いいよな。俺大好き」 「だ、だいすきて……! こんな固いケツ、何がええんだべさ!」  ケツとかゆーな。そういうところも可愛いけれど。 「うん、見た目じゃあさ、引き締まっててキュッとしてるじゃん。上向きで形もよくってさ。だから筋っぽく見えるけどさ、触ると違うのな。こう、中の肉がむっちりしてるっていうか、弾力あるっていうか。こう、強く掴むだろ。むにぃって指を押し返して来るんだけど、力を抜くと逆に指に吸い付いて来るわけ。俺、これ大好き。あれかな、俺が揉みまくったから、こんなエロいお尻になっちゃったのかな」 「ば、ばかばかばかぁ!」  しなやかな筋肉とほどよくついた脂肪のせいだろう。女のふっくらした尻とは違った柔らかさがある。  やたら事細かいシンタローの言葉に、ミヤギは顔を真っ赤にして怒っている。それでも情欲には勝てない。腰は動いているし、甘い吐息を隠せない。 「生で触っていい?」 「はぁっ!?」 「ミヤギちゃんの生尻揉みたいなー」  こんなところで、なのか、これ以上するのか、なのか。ミヤギの表情が戸惑いに変わり、わずかな逡巡を経て、  恥ずかしそうにこくりと頷いた。  別に脱がすわけではない。ベルトを緩め、スラックスのボタンとジッパーを開き、空いた隙間から手を滑り入れる。指先は下着の中に潜り込み、そして、ひんやりとした柔らかい肌に手のひら全体が吸い付いた。 「あー……最高……」 「……ばかたれっ」  ミヤギの白く甘やかな肌。それに包まれたむっちりとした肉。ゆっくりと揉みしだく。しなやかな筋肉の抵抗、指の重みを受け入れる脂肪の柔らかさ、しっとりと吸い付く肌の甘さが、シンタローの手に快感となって伝わる。 「……俺、死ぬ時はミヤギちゃんの尻揉みながら死にたい」 「ばかたれ! 変態! すけべ! エロ総帥!」  何とでも言え。まさに桃源郷だ、これは。 「あ、でもやっぱ『中』がいいかも」 「あっ……!?」  シンタローの指の一本が尻の割れ目に潜り込み、奥まったそこを撫でる。 「ちょ、すんたろ、待って……!」 「やっぱさー、ミヤギちゃんの『中』は最高だからなー」  指は中まで入り込んでこない。飽くまで表面を撫でさすり、すぼまった皺をなぞり、割れ目全体に指を滑らせ、焦らし続ける。  限界まで焦らすのだ。泣いて求め出すまで焦らし続ける。  布越しの愛撫でペニスを焦らし、肉を揉みしだいて尻を疼かせ、入り口を撫でて『中』を疼かせる。 「あ、あ、や、やぁ、こんなん……あっ、あっ、あぁっ……」  ミヤギの腰の動きが一段と淫らになってきた。椅子の両側に垂れ下がっていた足は、いつの間にかシンタローの腰を跨ぐように椅子の上に乗せられ、そこを支えに円を描くように、前後に揺れるように自分とシンタローのペニスをこすり合わせる。 「……ミヤギちゃん、可愛いなあ」  ひんやりとしていた尻の肉が火照ったように熱くなっている。汗でしっとりと濡れた肌は指にぴったりと同化し、はがそうとしても容易に離れない。 「んあっ! あっ、あっ、あっ、あっ……!」  ゆるい愛撫を受け続けたアナルはゆっくりと開きはじめ、中の粘膜が指の腹に触れてくる。しかし、中には差し入れない。そこをこね回し、円を描くように周囲の筋肉を嬲り続ける。もうしばらくすれば粘膜は充血し熱く赤くなり、プックリと膨らみ盛り上がってくるだろう。 「あー……あー……あぁー……」 「イキそうか? ん? もう出ちゃう?」  シンタローの目の前で悦楽にとろけるミヤギの表情。視線は定まらず、白痴のようにだらりと口を開き、桃色の舌がなまめかしく煽動している。開きっぱなしの口元からはよだれが溢れ出て、唇をてらてらと濡らしている。  めちゃくちゃ気持ち良さそうだな。  身体の中に渦巻くもどかしい快感が、臨界を向かえようとしてるのだろう。おそらく今のミヤギの頭の中では、悦楽の白い光がちかりちかりと花開いてるころだ。  けれど、ミヤギはここで達することを選ばない。ミヤギにとっての最大の快楽は嬲られ射精することではない。もっと強い快楽があることをシンタローはミヤギの肉にしっかりと教え込んでいる。 「いいぞ、出しちゃって。気持ちよくなっちゃえよ、ホラ、ホラ!」 「ひゃ、あ、あ"っ、あ"っ! あ"っ! あ"ーっ!」  シンタローが腰を使う。膝の上のミヤギの身体はより強く揺さぶられ、ペニスは激しく嬲られ、痣が残りそうなほど握りしめられた尻肉がわななき、指が第一関節まで内側に潜り込んだ。 「やっ! や、やだぁ……っ! 待って、待っ、ひゃぁっ! 待ってぇ! 待ってくんろ、すんたろぉっ!」  ミヤギの目に涙が盛り上がる。強すぎる快感が神経を暴走させ、わけもなく涙が出てくる。ぐすぐすと鼻を鳴らしながら、必死でシンタローの名を呼ぶ。 「やめて、やめてぇ……! コレやだべ、コレっ、こんなんでイクのやだぁぁっ!」 「えー、だって腰動かしてんのミヤギちゃんじゃん。気持ちよくって仕方ないんだろ? ん?」 「ちがっ……! 違うぅ、ちがぁの、コレ、コレ違うぅ……っ!」  発情した獣のような腰の動き。体が勝手に動いてるのだ。ミヤギの脳の命令を無視し、射精欲に取り付かれたペニスが自ら腰を動かしている。 「コレでねぐって……! オラ、スンタローとっ! すんたろぉ、すんたろ、すんたろさぁん……!」  完全に『スイッチ』が入っている。ミヤギが昔の呼び方でシンタローを呼ぶ時は、いつもそうだ。  今のミヤギの頭の中には、もうたった一つのことしかない。 「名前呼ばれるだけじゃわかんねえよ。言ってみ? 『いつも』みたいに、ほら……」  そっと耳元で優しく囁いてやる。ミヤギの背筋にぞくぞくっとした震えが走ったのが、はっきりと見て取れた。  ぐずぐずに崩れた表情。涙、よだれ、情欲という情欲に濡れそぼったミヤギの顔。快楽に持って行かれそうな意識を必死に引き留め、ギリギリで正気を『手放しかけている』目がシンタローを見つめる。  やばい。この顔には弱い。 「しっ、しんたろぉさんの……っ、すんたろさんのおちんぽぉっ! おちんぽをぉ……オラのけつ、けつあなつっこんで……っ! せっくすぅぅ……! せっくす、せっくすしてくらさぁいっ!!」  シンタローとセックスする。  もうミヤギはそれだけしか考えていない、考えられない。 「ひっ……! ひいぃぃぃん!!」  シンタローはミヤギの尻を力いっぱい掴んだ。歯を食いしばり、握力の限りで力いっぱい。でなければ、そうして耐えねば射精してしまいそうだった。 「いたいっ! いだぁいぃ! すんたろぉさぁん!」 「いいよぉ……じゃ、セックスしよっかぁ……?」  完全に泣き声になっているミヤギの声に興奮する。自分の鼻息が異常に荒くなっているのが分かった。背中の筋肉が変なふうに痙攣している。  今すぐにでもペニスをぶち込み、ケダモノのごとく腰を使いたかったが、ギリギリで耐える。今の自分は異常に興奮している。このまま机や床の上でミヤギを犯したら、絶対ケガをさせる。下手すりゃ骨の一本も折るかもしれない。  お姫様抱っこなどしている余裕はなかった。人さらいのごとくミヤギの身体を肩にかつぎ上げ、椅子を蹴り倒し、仮眠室への扉をこじ開け、ミヤギをベッドの上に投げ出した。  靴も脱がずにベッドに上り、その体に伸し掛かる。腕の間のミヤギ。固く目をつぶり、必死で息を整え、シーツを握り締めて今にも達しそうな体を押さえ込んでいる。  はーっ……はーっ……はーっ…… 「……シンタローさん……?」  いつまでたっても動かないシンタローの顔をミヤギが訝しげに見上げる。その不安げな表情に笑い返してやる。  まだだ。  もっとだ。  もっと、もっと、自分のことしか考えられなくしてやる。  自分とセックスすることしか、自分とのセックスしか考えられなくしてやる! 「んぅう!?」  食いつくように唇をからめる。  同時にシンタローとミヤギの両手が動き始める。シンタローがミヤギの服を、ミヤギがシンタローの服を脱がす。ネクタイを抜き取り、小さなYシャツのボタンをもどかしく外し、ベルトを捨て、下着とスラックスを一緒に蹴り下げる。  熱い。もう何一つ纏っていないのに、熱くて熱くてたまらない。直接触れる肌と肌が火傷しそうなほどの熱を伝えてくる。  ミヤギの脚を抱え上げる。こういうお互いが情欲に狂っている時は正常位と決まっている。シンタローが挿入し易いよう、ミヤギは腰を浮かせた。  サイドテーブルのローションやゴムに手を伸ばすのももどかしい。後で洗浄すればいい。ガチガチに張り詰めたペニスを赤く膨らんだアヌスに宛てがう。手元がかすかに震えていた。構うものか。一気に身体ごとミヤギの中に押し入る。 「ぎっ……んあ"ああああああっ……!!!!」  腕の中でミヤギがケダモノじみた咆哮を上げた。いい声だ。もっといい声を出させてやる。  熱い。ミヤギの中はどろどろに熱く、狭く、きつくシンタローを締め上げる。呼吸に合わせてかすかに煽動している。気持ちいい。ミヤギの身体を固く抱き締めて、呼吸を整える。 「しんたろーさん……うごいてぇ……っ!」 「……んー?」  引き攣れた声でミヤギが懇願する。当然だ。つい数十秒前まで射精する寸前だったのだ。早くイきたくて仕方ない。身体に追い立てられ、気が狂いそうになっているに違いあるまい。 「うごいてぇ……! 動いてくんろ、はやくっ! はやくぅ!」 「ミヤギちゃんさぁ……俺とセックスしたいんだよなぁ……」 「したいぃ……! してる、シンタローさんとしてるからぁ! だから、だから早く……っ!」 「じゃあさ、『セックス』って言いな。一回言ったら一回突いてやる」 「へぇっ!?」  身を起こして、ミヤギの顔を見る。いまさら何を言い出すのかと裏切られたかのような、絶望したかのような表情。 「ほら、言えよ。言わなきゃずっとこのままだから」  シンタローの腰はミヤギの腰に密着したまま、ピクリとも動かない。  ミヤギにだって分かっているはずだ。このままシンタローが耐えられるはずがない。しばらく我慢すれば、その内堪え切れなくなったシンタローが飢えたように腰を使い始めるはずだ。  我慢できなかった。一秒だって我慢できなかった。 「せ……セックス……」  ずぷ。 「ぃひんっ!」  シンタローの腰が一回、大きく動いた。腹をかき回される感触。 「セックス……せっくすぅ……」  ずぷっ、ずりゅっ! 「ひあっ! あぁっ!」  腰を引き突き上げ、捻るように動かしてさらに奥をつく。  セックスされてる。シンタローとつながって、内臓に受け入れ、一つになって、気持ちいい、おかしくなる、頭おかしくなる、セックス、セックスされて、もう、もうこのまま、 「セックス! セックスセックスセックスセックスぅぅぅッ!」  ズプッ! ズプッ! ズプッ! ズプッ! ズプッ! 「あ"あぁっ! あんっ! あっ、あーーーっ!!!」  一生、このままでいい。 「セックス! セックス、セックスして、あっ! しんたろーさんとせっくす、せっくすいいっ! すご、あ、あんっ! あ、や、やめちゃやだ、やだぁぁぁ、せっくすせっくすせっくすせっくすぅぅっ!!」  ミヤギの直腸がシンタローのペニスに熱く絡み付く。括約筋が根元を締め上げ、腹筋全体が狭い肉を作り、腹の中でシンタローをしごき上げる。奥に突き入れ吸い込まれそうな感触を楽しみ、引き抜いて名残惜しげに纏わり付く感触を楽しむ。  完全な性器としてのアヌス。細い腹の中に極太のペニスが分け入り、その度に腹筋が蠢くするのが面白い。 「セックスぅっ……しんたろーさんと、すんたろーさんとせっくす、すんたろさんのちんぽで、ちんぽでせっくす、あ、せっくす、すご、ちんぽ、ちんぽでハメられて、せっくすされて、もっと、もっとせっくす、ハメっ、あっ、ケツにっ、あっ、あっ、ケツハメして、せっくす、ケツで、ちんぽ、ケツセックス、セックス、ケツハメセックスぅぅぅっ!!!!」  ミヤギは喘ぐことすら忘れて、ひたすら卑語を連呼する。より卑猥な言葉を言えば、より強く突いてもらえると思っているのかもしれない。  もはやシンタローの動きは止まらない。ミヤギが何も言わずとも無体はされないだろう。しかしミヤギも止まらなかった。頭の中がいやらしい単語でいっぱいになり、突かれるたびにそれが口から溢れ、自分の発した下品な言葉に煽られ、思考が塗り替えられていく。もうセックスのことしか考えられない。 「すごっ、しゅごいっ、すんたろさんとセックスしゅごっ、いいっ、せっくすきもちぃぃっ! すんたろさん、すんたろさんちんぽで、ハメセックス、ついてっ、ずぽずぽついて、ひゅごい、すきっ、すきぃっ! これ好き、うれしいっ、セックス好きぃ、ケツにちんぽハメられるセックスだいしゅきぃぃっ!」 「ああっ……よかったな、ミヤギちゃん……っ! チンポをケツハメしてもらって! 大好きなセックスしてもらって気持ちよくって、よかったなあっ!!」  それでいい。そうやって狂えばいい。自分との愛欲に狂えばいい。狂え。狂ってくれ。俺のことだけ、俺と抱き合うことだけ、それだけを、それだけのために、俺を愛して、俺に愛されて、それだけ、そのために、そのためだけに、 「うんっ! すき、すき、すんたろさんとせっくす、しんたろさん、せっくす、すんたろさんのせっくす、すき、すんたろさん、すき、だいすき、しんたろぉひゃんっ! しんたろぉさん、だいすきぃっ!」  自分だけを愛してほしい。 「すきぃぃぃい……っ! しんたろさん、しんたろさん、すき、しんたろさん、すき、すき、だいすき、すき、しんたろさん、もっと、しんたろさん、だいすき、あいしてる、すき、しんたろさん、しんたろさん、すき、しんたろさん、すんたろぉさあああん……っ!」  ゾクゾクした。涙が出た。気持ち良すぎて頭がおかしくなりそうだった。ずっとしていたい、こいつとずっとセックスしていたい、このまま、ずっと、気持ちいい、気が狂いそうだ、ずっとこのまま、抱き合って、溶け合って、このまま、 「……俺も」  一生、このままでいい。 「俺も、愛してるよ、ミヤギ」  勝手に腰が動く。頭の中で白い火花が散る。射精欲だけで身体が動いていた。 「ほんと? すき? すんたろさん、すき? オラのこと、すんたろさん、だいすき、すんたろさんだいすき、すき? ほんと?」 「うん、好きだ。ミヤギちゃんが大好きだ、好きだ、好きだ……っ!」 「しんたろひゃん……ひんたろぉひゃぁぁん……!」  固く抱き合う。このまま一つに溶けてしまいそうなほど、固く、強く。 「ひんたろひゃん、こっひも……こっひもせっくすぅ……」  ミヤギが大きく口を開き、舌を突き出して誘う。その開いた口という性器の中に舌という性器を突っ込む。性器同士が絡み合うセックス。 「んふー……ふーっ、ふっ、んふっ!」 「ふぅ、ふ、ふむ、ん、んふぅ!」  舌同士が絡まっているのでもはや意味のある言葉はでない。それでも伝えたかった。どれほど好きか、どれだけ愛してるか。  頭の中でひらめく閃光がその周期を速めてきた。より強く光るそれに意識を持って行かれそうになる。3cmの距離にあるミヤギの顔を見る。同じだ、必死で光に今の悦楽を奪われまいと耐えている。  舌を強く、強く吸い上げた。 「……っ、っんぅぅぅ〜〜〜……っ!!!」  光が爆発した。  ミヤギは一瞬でその光に意識を奪われ、失神した。  なんとか堪えたシンタローは、射精の快感に全身を震わせ、ミヤギの体内奥深くに熱い精液を吐き出した。 「そういや、さっき愛してるっつーてたども、ほんとけ?」  危うく風呂の床で滑って転んで頭打って死ぬところだった。  カランに掴まって持ちこたえたシンタローは、恐る恐る、バスタブの中で手ぬぐいでクラゲ作って遊んでるミヤギの顔を見る。 「……お前、覚えてんの?」 「? そりゃ、別に酔っ払ってたわけでもねーし」  お前、全部覚えてて、よくそんな平気な顔出来るな。  失神から起こしたミヤギは別に恥じらう訳でもなく、ごく普段どおりに振る舞っていた。だから、すっかり先ほどのことは記憶にないのだろうと思い込んでいたのだ。  だって、普通は恥ずかしがるだろう。あんな淫語叫びまくってたんだぞ、セックスだのケツハメだの叫びまくって、その直後にごく普通に今日の夕飯の献立話せるやつがどこにいるよ、いやここにいたんだけどさ、俺普通に冷蔵庫の中の鮭のこととか話しちゃったよ、あー何年経ってもこいつの考えることだけはわかんねえ。 「なー、ほんとけ? 愛してる?」 「……はいはーい。愛してますよー、この世の誰よりも愛しちゃってますよ、もうね、一生の恋人だねミヤギちゃんは。好き好き大好き超愛してる」 「……真実味ねーなー」  そう思っていただきたい。 「さっきは本当だと思ったんだけんどなー」  お願い忘れて。マジで。何で俺がこんな恥ずかしい思いしなきゃいけねーんだよ、逆だろ逆。 「……ミヤギちゃんは?」 「ん?」 「ミヤギちゃんも、愛してるとか言ってたぜ?」  逆襲だ。ほーら、恥ずかしがるがいい。 「今更なに言ってんだべ、スンタローは」  流されたー。 「オラ、鮭は普通に塩で焼いたんがいいなー。ムニエルとかあんま好きでねーべ、やっぱ日本人なら和食だべな。なー、スンタロー……? スンタロー? どげした? 洗面器でも人は溺れることあんだぞ?」  酸欠になって消し飛べ、俺の記憶。