『白蘭聖母(マグノリア・マドンナ)』  ミヤギ専用武装。無人で大西洋上を漂流していた最新鋭空母『セイレーン』を接収した時にミヤギが『白蘭』の名前で封印した『バケモノ(ミヤギ談)』が本体。  通常時はコートの裏に仮死状態で封印されているが、着用するとともに着用者の腰椎から全身に霊的な『根』を張り巡らせ、覚醒する(『名付け』で契約したミヤギ以外が着用すると、その時点で根に食い殺される)。覚醒時は常に『花弁』の創造を続け、着用者の意志により、より巨大もしくは大量の花びらの創造が可能。  『白蘭』は、本来、異次元存在であり、この世界である『現実』に置いては、ほぼ『神性』と呼んでも構わない生物であるため、質量保存の法則は当てはまらず、例え一切の原子が存在しない真空中においても『花弁』を創造することが出来る。この無限の『花弁』により、ミヤギは存在兵器『無限兵装』を運用可能とする。  ただし、全身に張り巡らされた霊的な『根』は、花弁の創造に当たり、『受肉』の養分として血中の酸素、糖分などを消費するため、バックアップ無しで単独運用が出来るのは15分間が限度とされている。長時間運用が必要な場合は、全身に生命維持装置をつないだ状態になるが、体力の消費が激しいことに変わりはない。  また、『根』を実体化させることも可能だが、花弁以上の養分が必要な上、場合によっては皮膚を突き破って発現させることになるため、ほとんど使用されることはない。 『紫檀乙女(オシリス・メイデン)』  アラシヤマ専用武装。白蘭聖母と違い、純粋に人間の科学力で作られたもの。  顔の上半分(脳、目、耳、鼻)を覆う仮面と、それに付随する光熱ファイバー製の全身を覆うマントからなる武装。  光熱ファイバーマントは通常時より、アラシヤマの放つ炎を『蓄える』ことが出来、『燃える』マントになるが、本体は仮面である。視覚、聴覚、嗅覚に働きかける『刺激薬物』と補助的な脳波コントロールにより、着用者の精神状態を強制的に『神懸り(トランス)』状態に移行させ、超短時間(0.03秒間)ながらも小型核クラスの熱量を発生させることが可能。この圧倒的な熱量とそれを『外側』のみに放出するマントにより、アラシヤマは特殊戦術『領域駆逐』を運用可能とする。  ただし、強制トランスによる精神ダメージは非常に大きく、12時間の休息を含む20時間の着用中、5回以上の『放出』を行うと脳の基幹部分に回復不可能なダメージを負い、廃人となってしまうことが予測されている。そのため、安全性を鑑み、着用は二ヶ月に一回、6時間以内が規定となっている。それでも十分なメンタルケア、補助薬物による鎮静作業がない場合、極度の混乱、幻覚が着用者を襲うことになる。 『霹靂風精(ブルー・シルフ)』  トットリ専用武装。正確には武装ではなく、応用戦術と言ったほうが正しい。  能天気雲を脚甲に組み込み、下駄による指令ではなく、特殊な『禹歩』による命令実行を可能としたもの。小型圧縮された『気象』と、正確な命令伝達により、超高温度、超低温度、超高電圧、超高風圧、超高水圧の『脚刃』としての使用が可能。  しかし、それらは二次的な利用であり、本来は、周辺温度の高速推移や、電圧変換によって生み出される高エネルギー、それによって発生する気圧変化とその風力を封じ込め、一方向に噴射する気流コントロールによる『ジェットエンジン』こそが霹靂風精の能力であり、それによる運用方法が特殊戦術『機動猟兵』である。  軽重量(人間+靴の重量のみ)と高エネルギーのため、理論値ではマッハ8での巡行が可能だが、そこまで行くと『飛んでる本人がどこにいるのか分からない』のと『加速による重力変化で、手足の末端がちぎれかけない』ということで、通常はマッハ2〜3程度の巡航速度を取る。(摩擦熱や呼吸については、気流コントロールにより解決可能)  ちなみに、大気状態、月齢、干潮満潮などの条件さえ揃えば、超短時間、超短距離に限り、光速の22%での機動が可能となり、これによって人間の認識上では『全く同時に同一人物が複数存在する』状態となる。つまり『実体を持った影分身』による攻撃である。場合によっては、この影分身自体を『霹靂風精』と呼ぶ。  ……重ねて言えば、別に能天気雲のままでもこれらの戦術は使用可能であるが、敢えて武装の形を取っているのは、上層部による『そのほうがカッコイイから』という命令に他ならない。 『満願御前(万願御前)』  コージ専用武装。武装というよりは、呪いもしくは魔術である。  『ある事件』により、コージに取り付いた『オバケ(ミヤギ談)』を『御前様』の名前でグローブに封印したもの。  グローブの内側に小さな刃が仕込まれており、着用と同時に肌に食い込み血を吸い出し始める。その状態で、グローブで握ったもの全て、刀であれバットであれ石ころであれボールペンであれ、もしくはただの拳さえも、それら全てが存在兵器『満願御前』と呼ばれることになる。  グローブに封印された『御前様』は、着用者の血液を摂取することで人を『呪い』出す。『満願御前』で打たれたものは、例えそれが致命傷に達する怪我や衝撃でなくとも、即座に『呪い』がかかり、70秒後に死、もしくは昏睡に至る。  消費される血液量は人間一人の死につき平均10ml、昏睡につき平均5ml。人間以外の動植物にも有効であるが、血液消費量は対象の『命の消費量』に反比例して上がるため、食物連鎖の下層に位置するものほど血液消費量が大きくなる。人間の10mlという量はほぼ最低量に近い。また、それにより、熟練の兵士ほど一回の消費量が少なくなり、経験の浅い少年兵などは消費量が多くなる。効率よく白兵戦をこなすには、熟練兵士や、いわゆる『悪人』を狙っていく必要があるという点で、ある意味『正義の拳』。  消費される血液は基本的に静脈血だが、一回の戦闘が長引くと次第に動脈血へシフトする(コージ曰く、『御前様が調子に乗る』)。動脈血が使用されだすと、場合によっては出血量が御前様の消費量を上回り、血の滴るまま戦闘を続行することがある。常人では使用不可能な武装である。  ……問題は、いくら血液を消費しても、貧血一つ起こさずケロリとしているコージの生命力が、御前様の呪いをはるかに上回っていることであり、そういう意味では、四人中一番安全な武装である。最高記録は、一回の戦闘につき概算4.7リットルを消費。全血液のほぼ半分以上を失った計算になるが、それでもぴんしゃんしていた。もはやコージ自身が何かの化け物である。