ありがとう(以下略)

「泣いてはおらへんようどすな」
「おなごでもあるめぇし、泣いてどうにかなるもんでもねえべや」
 そう言って、互いに曖昧な笑みを浮かべ、アラシヤマは小さなディスクをミヤギに手渡した。
「残念どしたなぁ。最後に一緒におれたんは、わてですわ」
「おめ、まぁだそげなこと言ってンのかい?」
 くすくすと笑う表情は以前と全く変わらないように思える。胸ポケットからつぶれたタバコの箱を取り出し、撚れ切った最後の一本を口に咥える。アラシヤマは軽く指を弾いて、それに火をつけてやった。眉だけで礼を言って、ミヤギが空箱を投げ捨てる。
「苦しまなかったンかな」
「最後まで気丈どした。あのお方らしいわ」
「そっか」
「死んだほうがマシだったはずや」
「そっだら、おめが殺してやりゃえがったべや」
 全く変わらない表情のミヤギに、アラシヤマは目を見開く。
「出来っぺ?おめならよ」
「あんさん、とんでもないこと言わはりますな」
「おらには出来ねもん」
 アラシヤマがディスクを指差す。
「ソレ。聴いときなはれ」
「なにが入ってんだべ?」
「"伝言"どす」
 ミヤギはディスクをぞんざいに突き返した。
「いらね」
「……いらん、言わはりましても」
「重要な任務伝達があるなら、書類にしてけろ。それ以外はいらね」
 タバコ半本分の灰が、薄汚れた革靴のつま先に落ちた。
「もういらね」

>Next

>Text Top
>>Top