一番長い日
そのよん グンマのプレゼント
| 「えー、くれるのこれー。ありがとーv」 「どーいたしまして……だべ」 確変は二連チャン続き、すっかり遅くなってしまった。業務終了ギリギリの研究棟に駆け込み、実験データと大量の駄菓子をグンマに受け渡す。 「オラ、こんなに食えねーもん」 「ありがとー、おやつにするねー。あ、そうだそうだ。僕もミヤギにバースデイプレゼントがあるんだ」 「あんだべ、おめも覚えてたんか。わざわざそげなもんいらねーのに……」 「いいじゃん、プレゼントって言うのはあげる方が楽しいんだから。はい、これ」 一見すれば、ごく普通の携帯電話。 「ん?オラ、別に今の機種に不満はねえけんども……」 「そうじゃないよお。作戦行動用に色々機能ついてるんだよ。ほら、ここ押すと迷彩電波で会話が出来るし……」 「おお!」 「一見カメラなしに見えるでしょ。でもねー、ここがカメラでねー、シャッターはこれで……」 「おー、便利だべなー、これ!」 「でしょー?でねー、困ったときにはここを押すとね」 「これけ?」 ぽちっ。 「五秒後に自爆するの」 すさまじい反射神経で、ミヤギは窓を開け、思いっきり携帯電話を投げた。 ……どぉぅん…… 空で爆風を散らし、その衝撃波がミヤギの髪を揺らす。 「ね?すごいでしょーv」 「すごいでしょーvで、ねえべ!自爆スイッチなら、自爆スイッチだって先に言うべ!」 「困ったときでもないのに押すミヤギが悪いんじゃん」 「いらね。あんな押しやすいとこに自爆スイッチがある携帯電話なんか、怖くて持ち歩けねえべ」 「ちぇっ……じゃあ、こっちはどう?」 ノートパソコンである。 「オラ、パソコン苦手なんだべ……」 「大丈夫!これはねー、最新のAI積んでてねー、今までのよりずっと簡単に操作できるんだよ!メールだってスイッチ一つで……」 「ジャパネットたかだの人みてえだな、おめ」 「それに、これも改造してあってね。ほら、ここを引っ張ると隠しディスクが出てきて、内部のデータを偽装できたり……」 「ほほー」 「操作性も、通常の入力方式以外に、音声入力と視線入力サポートしてるし、声紋による本人認証機能も……」 「へー。マウス操作はここだべな」 キーボードの中央にある赤いスイッチを押す。 「あ、それは自爆ボタン」 再び、窓からノートパソコンを投げ捨てる。 ………どおぉぉおん! 爆発の規模がでかい。携帯電話より大きい分、爆薬の量が多かったらしい。 「もー!なんで、分かりやすく赤いボタンにしたのに押しちゃうんだよー!」 「フツーあそこに赤いボタンあったら、ポインティングスティックだと思うべーーー!?」 「なにそれ、マックはそんなのないよ」 「……林檎信者はこれだからいやだべ。大体普通、あんなど真ん中に自爆ボタンつけねえべ!」 「緊急の時に押し易い場所になければ意味ないと思うんだけどなー……」 「ともかく貰うんなら自爆機能ついてねえやつの方がいいべ」 ぶーたれるグンマを無視して、部屋を出ようとする。 「わかったよお。……あ、そういえばミヤギ、犬好きだったよね」 「好きっちゃ、好きだども……」 「じゃあ、これあげるー。おいでーー」 グンマが奥に向かって手を叩くと、戸棚の裏からタタタッと何かが走り出てきた。 「……なんだべ、これ」 中型犬程度のサイズ。全身がマット加工のチタン合金で覆われていた。 「開発中のロボット犬のプロトタイプ。重装備の時なんかにね、こいつに背負わせて移動するの。これは、四足歩行の実験用だから、そんなパワーないけどね。データも取り終わったし、あげるよ」 すりすりと本物の犬さながらに、ミヤギの足にすりついてくる。 「AIテスト用に本物の犬の行動パターン入れたんだ。しつけも出来るし、芸も仕込めるよー……どしたの?」 「……かっわいいなぁーーーvv」 「……気に入ったんだ」 まさに破顔、という感じで、ニコニコとロボット犬を見ている。頭を撫でると、目の部分に仕込んであるLEDをピカピカさせる。 「ほんとにこれもらっていいんけ!?」 「いいよー。倉庫に仕舞っちゃうのも可哀想だしね。可愛がってあげてね」 「おう、可愛がるべ!あんがとな、グンマ!ほれ、ついてくるべトリ次郎!」 「……名前つけたんだ。って言うか、それが名前なんだ……」 ミヤギが上機嫌でドアを開け、そのあとを命名トリ次郎(もしかしなくても、『太郎』はあの人だ)がついていく。一息ついたグンマが、駄菓子を食べようと紙袋を開けた瞬間だった。 『ギャーーーーーー!!!』 廊下からすんげー悲鳴が上がった。 ああ、多分、アレだろう。グンマはドアを開け、顔だけを廊下に出す。 「あー、あのねー。それ、発情期も行動パターンに仕込んであるからー」 「先に言うべ、バカタレーーーー!こんなんいるかあーーーー!」 廊下の先には、ミヤギの足に腰を擦り付けるトリ次郎がいた。 |