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2008年2月26日

求めすぎてる?僕

 銀桂前提沖桂。現代パロ&女体化注意。
 なんか、銀桂の人にも沖桂の人にも怒られそうな感じ。

 タイトルは及川光博より。


 俺の彼女。そういってコーチが連れてきた女性は、この男むさい&男みたいな女しかいない体育大学の剣道場にあって、まさに掃き溜めに鶴、地獄に菩薩(というのかは知らないけれど)。部員はなにか思いついては質問しに近寄り、練習中もちらちらと見てはコーチにどやされる。もちろん自分も例外ではないのだが、バレるようなあからさまな見方はしない。優れた剣士というのは、目を動かさずとも視界の全てを把握できるものだ。とか、なんとか。
 両手に持っている高そうな白いコート。黒いニットのタートルネックは、細い、けれど骨っぽくないしなやかな女性のラインをはっきりと浮かせている。淡い色合いのフレアースカート。その下から伸びる黒タイツの細い足。清楚。コーチの幼馴染だというから同じ30くらいなのだろうけれど、20代前半と言われても納得できる感じ。高校までは女子剣道をしていたらしい。道理で姿勢がいい。
 ふと目が合った。にっこりと笑って、小さく手を振られた。
 ああ、あの人も優れた剣士だということだ。バレバレだった。


「先生。彼女、もう連れてこねえんですかぃ?」
「あー? やだよ、アレ来るとお前ら練習にならねえじゃん。マネージャーやらせようと思ったのによ、逆効果だよ」
「マネージャーって、お仕事は?」
「やめさせたの。結婚するから」
「……へぇ……」
「なに、その反応。俺が結婚しちゃおかしいか」
「先生が所帯を持つたぁ、世も末だな、と」
 ひゅんと飛んできたボールペンを避ける。けたけたとコーチが笑った。コーチは机にかじりつくようにして練習メニューの調整していた。彼の猫背は竹刀を握らない限り伸びることがない。その分、竹刀を握ったときの凛々しさと言ったら男の目から見ても大層なもので、数少ない女子部員がこっそりと写真を持っていたりするのも頷ける。彼女も、眩しいものを見るような目でその姿を見つめていた。
「いまどき専業主婦ですかぃ」
「俺、独占欲強いから。奥さんが俺の知らないところで何かやってるとか嫌なの」
「彼女さん、愛されてますねぃ」
「愛してるよぉ。20年越しですから」
 にへら、と、だらしない顔で笑う。
 先生、その彼女さんは俺と隔週でセックスしてるんですよ。
 練習開始の号令が聞こえなければ、口に出してしまうところだった。


「気付かなかったのか?」
 ほら、と、左手をひらめかせる。薬指でシルバーのリングが鈍く光る。
「婚約指輪っつったら、もっとでっかいダイヤとかついてるもんでしょうよ」
「そんな指輪、普段からつけられないだろう」
 愛しげにシンプルなリングを眺め、そっと手のひらで包む。
「旦那さん、愛されてますねぃ」
「でなければ、結婚などしない」
 剥き出しの白い背中が、くすくすという笑い声に合わせて揺れる。
 女の子の体と女の人の体は違うんだというのを、桂さんの裸を見て初めて知った。ものすごく細いのに、なぜか腰骨の回りやお腹はふっくらしていて、高校の時の彼女のぺったんこなお腹や尻とは全然違った。
 そのふっくらした腰にぎゅうと抱き着く。桂さんの細い指が俺の髪を梳く。猫っ毛で色の薄いのが可愛い。赤ちゃんみたい。自分と銀時の子供は絶対髪が固いから、今のうちに堪能しておく。なんてこと言うんだ、この女。
「桂さん」
「うん?」
「どうして、俺とセックスしてくれたんですかぃ?」
「沖田くんが可愛いから」
 指が、髪から頤に降り、沖田のまだ少年の面差しを残す頬を撫でる。
「他にいくらでも女の子はいるのに、わざわざこんなおばさん相手に本気になって、思春期みたいな必死な顔して押し倒してきたのが可愛かったから」
 さわさわと撫でさすり、柔らかな鼻の頭を押し、瑞々しい肌を軽くつねる。
「かわいそう、沖田くん。次の大会、先鋒? コーチに嫌われたら、外されてしまうな。レギュラーから外れたら奨学金貰えないんだって? そうしたら、お姉さんへの仕送りができなくなってしまうなあ」
 指はどこまでも優しく、沖田の若い肌を慈しむ。
「誰から聞いたんですかぃ」
「銀時」
 がぶり。唇をなぞっていた指に軽く噛み付いてやった。きゃあ、と楽しそうな悲鳴が上がる。わずかによじれた腰を追いかけるように沖田は身を起こし、桂の細い腕を掴んでシーツに押し付けた。
 腕の中の体は、折れそうなほど細いのにどこもかしこも柔らかい。丸い肩から繋がるなだらかな胸、華奢なあばらの上を覆う柔らかな肌。太ももを掴めば、どこまでも指が沈み込んでいきそうな気がした。
 くらくらする。自分よりも十年も先に生まれて、自分が鼻を垂らして駆けずり回ってたころにはセックスを知って、それから十年以上もずっと男に愛され続けてきたひと。自分が知っているセックスと、この人の知っているセックスは全くの別物なのではないか。だって、あの同級生はこんなに柔らかくなかった。こんな飲み込まれて沈み込みそうな、そんな気持ちにはならなかった。
「ゴム無しでいいですかぃ?」
「いきなりだな。まあ、病気は持っていないが」
 仮にも他人の女だ。コンドームを欠かしたことはなかった。でもそれは、本当のセックスじゃない気がする。この人が知っているはずの、本当のそれではない気がする。
「桂さんを、妊娠させてみたいんでさぁ」
 ぱちくりと瞬きをして、また楽しそうに笑う。その表情は少女のようで、同時に目許の皮膚がくしゃくしゃになって年相応にも見えて。
「無理だな。ピルを飲んでるから」
 またバカにされた。噛み付くようにキスをして、ねじ込むように腰を押し付ける。
 かわいい、沖田くんかわいい。
 うるさいうるさい。俺はあんたのおもちゃじゃないんだ。
 あんたが欲しくて欲しくてたまらない、男なんだ。