2008年7月19日
せんせいとぼくとなつやすみ
3Z、銀八×桂。桂君の夏休みの始まり。
団地みたいなマンションだった。しっかりした鉄筋コンクリートなのに階段や公共部分の作りがチープで、古びて薄暗い。
「バブル前に作られたやつだからさあ。築三十年。作り自体はしっかりしてんだけどね。安いし」
そういう先生の背中を追いながら、ずりさがったスポーツバッグをかつぎ直す。
「持ってやろうか?」
首を振って断る。すでに教科書やワークブックが入ったカバンを持ってもらっているのだし、スポーツバッグの中身は着替え類だからさして重くはない。
「ここ」
緑ともベージュともつかない、曖昧な色のペンキが塗られた鉄のドア。先生はポケットから出したカギを差し込もうとして、
ぴたりと動きを止めた。
「もう一回、確認するけど」
しつこいと思う。何度も聞いたし、何度も答えた。
「こっから中入ったら、俺はお前を人間扱いしないよ? お前は俺のペットでおもちゃで、俺はお前のご主人様。命令には絶対服従。そういう契約。それでいい?」
「それで、いいです」
先生の眉が変なふうに曲がる。おかしい。この『合宿』を持ちかけてきたのは先生なのに。
「身体に傷はつけない」
「はい」
「体調がおかしかったらちゃんと言う」
「はい」
「ストップワードは?」
「家に帰してください」
絶対、言うつもりはないけれど。
先生は分かったと言うふうに頷いて、カギをドアノブに差し込んだ。
がちゃん。
重苦しい金属音が響いて、真っ暗な部屋へのドアが開く。
「ほら、入れ」
膝が震えていた。暑さのせいではない汗が背中を伝う。飲み込んだ生唾はいやな味がした。
この中に入れば、もう後戻りできない。ぐちゃぐちゃに壊されて、作り直されて、きっと僕の中身は全部変わってしまう。
恐怖ではなかった。目が眩むような誘惑だった。
「お邪魔します」
僕の背中で、開けた時と同じ重い音を立てて扉が閉まって、かちりとチェーンが掛けられて、僕は床に突き飛ばされ、電気もつけないまま服を剥ぎ取られ犯された。
夏休みの一カ月半、僕は先生の家に泊まる。そして、先生のおもちゃにしてもらう。
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