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王子様と秋の空 [将棋]
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2007年8月27日

秒速5センチメートル 前編

秒速5センチメートル

 銀桂、土→ヅラ子中心に、お妙さんとか他のキャラの影とかチラホラ。
 新海誠の同名映画と引っ掛けてありますが、見てなくても大丈夫なはず。見てればよし。映画のネタバレ全開なので、これから見る人は要注意。


<<プロローグ>>

「童貞をこじらせたような映画だったな」
 チャイティーを啜りながらの桂(いや、今はヅラ子と言うべきか)の言葉に、銀時と土方(こいつも今はトッシーって呼んだほうがいいのかもしれない)は盛大に飲んでいたマンゴーラッシーとキャラメルラテを噴出した。唯一、お妙だけがいつも通りのニコニコとした笑顔で、両手にアイスティーを持ちながら相槌を打っている。
「思い出と言うものは美化されるものだ。その美しいものを大切にすると言う志は気高い。しかし、必要以上に捕らわれてしまうと言うのは如何なものか。今、目の前にあるもっと美しいものを取り逃してしまうと言うことになりはしないか。そうなってしまえば、すでにその思い出は呪いと化したと言えるだろう。童貞の呪いだ、童貞の呪い。あー、胸糞悪い」
「そうですねえ。私としても、一瞬の思い出だけを見て、今の自分を見てもらえない、と言うのは、気味が悪いにも程があります。所詮、テメーが好きなのはテメーの思い出の中の女であって私なんかどーでもいいんじゃねえかオナニーのし過ぎてチンコ腐ってもげて死ねコンチクショウ、って気持ちになるわ」
 え、なにこれ、女の暗黒面? いや、一人は女じゃないんだけど、でもなんつーか、怖いんですけどおおおお!!
「い、いや、しかしだな、ヅラ子嬢、妙嬢!」
「なんだその、嬢って。キモイ。死ねばいいのに」
「土方さん、ちょっと見ない内にずいぶんとウザくなりましたねえ。死ねばいいのに」
「死ねばいいのにってぇぇ! ひどいこと言ってるけどな、男の純情ってのはそう簡単に……!」
「何が純情だ、一発済ませば布団にいるのも嫌がる生き物だろうが、男ってのはァ! 正直に言え、腕枕しながら内心うざがってるだろう!」
「殿方にどんな甘い言葉を戴いても、家帰ったらエロビデオ見てるんだろうなあ、と思うと、ものすごく冷静な目で見れます」
 新八ィ、神楽ァ、銀さんこんなところ来るんじゃなかったよ怖いよ帰りたいよー。
 銀時は一人テーブルから顔を背け、かなり量の少なくなったマンゴーラッシーをずるずる吸い込む。
 話は一週間前に遡る。


<<桜花抄>>

 今日も今日とて突然窓から入ってきた桂は、すぐそこで買ってきたという大福を神楽に渡し、この先で真選組が網を張ってるから変装する、手伝ってくれ、と言い出した。
「手伝え、って言われてもな……新八、なんか着替えあるか?」
「ありますけど、僕のじゃ桂さんには丈が合わないでしょう。銀さんのほうがいいんじゃないですか?」
「ああいいんだ、服はある。リーダー、DKフォームの準備を頼む」
「ルージャ! 変身プロセスはリーダーの仕事ヨ!」
「何お前ら、変な打ち合わせすませてんの!? つーか、変身プロセスって、むしろ司令の仕事じゃない!? え、じゃあ、俺の仕事!?」
「銀さん、司令だったんですか……さっちゃんさんじゃなかったんですか……」
「おうよ、百鬼夜行をぶった切るよ? 地獄の番犬よ?」
「あれは未だもって『抱かれたい犬No.1』だな……」
「二人ともなんか普通に話してるけど、もう微妙に古いからね、デカレンジャー!」
「ヅラァ! DKフォームヨ、受け取れー!」
「ルージャ!」
 そういって神楽投げてきた風呂敷包みは桂の胸元に飛び込み、結び目が解け、中から出てきたのは紫の小袖。
 女物の。
「DKフォームって、DuraKoフォームの略かあ!!」
「目くらましなら、これが一番確実だろうが」
「桂さん、僕、髪結いましょうか? 姉さんの手伝ってるんで少しは出来ますよ」
「ああ、頼む。自分だと紐で括るくらいしかできないからな……」
「うわああ、なんか新八くんが適応してるうう」
 三人がかりの変身プロセスは着々と進み、化粧も神楽が寝床の奥から出してきたクッキー缶の中身で済まされ(桂が預けていた以外に、神楽が自分の興味で買ったものも混じっているらしい)、四半刻後には立派なヅラ子さんが万事屋に出現した。
「世話になった。服は後で取りに来るから、置いといてくれ」
「……はーい、お元気でー」
「大福、全部自分で食うんじゃないぞ。リーダーに半分、残りを貴様と新八くんで半分ずつだ」
「うるせー、さっさと出てけ!」
 来た時とは違い、表の玄関から堂々と出て行く桂、もといヅラ子を見送る。
 台風一過。まだ脱ぎ散らかした着物が散乱している居間に戻ろうとすれば、ガンガンと玄関がノックされた。桂が何か忘れ物でもしたのだろう、銀時は特に何も考えず扉を開け……
「御用改めであ「間に合ってます」
 ピシャンと閉めれば無理やり開けようとガタガタと扉を揺らされ、それを中から押さえ込む。内と外の攻防に、破壊と修復を重ねていい加減ぼろぼろになっている引き戸は悲鳴を上げていた。
「テメエ万事屋、いきなり協力拒否か! 公務執行妨害でしょっ引くぞコルァ!」
「しーりーまーせーんー! 警察への協力は、市民の善意によるものでーす! あと、うち万事屋ですからー! 協力っていうなら、ギャラ戴かないとー!」
 何ぞ何ぞと顔を出してきた新八と神楽に居間を片付けろと身振りで示し、しばらく堪えたところで引き戸の骨組みが限界を超えた。釘がはじけ飛び、粉々に砕け散る。
「あーあ、あとで請求書送るからな、多串ぃ」
「誰が多串だ! セリフも全部聞かねーで閉めやがって! 押し売りか、俺は!」
「押し売りより生産性ねーよ、おめーらは。人んちの玄関壊すわ、バズーカ打ち込むわ、破壊してくなら代わりに何か創造していけ、ンのヤロー」
 まあ、その全ては破壊の権化(主に当人の脳内が)である桂絡みなのだが、今言っても詮無きことである。
 破壊されてしまっては防ぎようもない。居間へ続く扉は閉めてあるし、もうあらかた片付いた頃だろう。とりあえず、この肩で息をする副長殿を適当にあしらっておく。
「で、何の用?」
「さっき、ここから女が出て行ったな」
 まあ、見た目はね。
「ずいぶんと親しげだったじゃねえか」
 まあ、そりゃあね。
「……ありゃ、何者だ?」
「なんスか、今日の真選組さんは人の色恋にケチつけるお仕事スか。馬に蹴られて死ねやコルァ」
「……やっぱりそうか」
 ……あれ?
「いや、まあ、そうじゃねえかと思ったんだよ……着替えとか話してただろ? へっ、意外とやるじゃねえか、万事屋ぁ……」
「……あっれー? なんかおかしいぞー? 何の用だったのかな、多串くーん?」
「しっかし、あんなきれいな人がアンタみてえな男とな……人ってのはわかんないもんだ、って、いてええええ!!?」
「キモ! こいつキモっ!」
 反射的に踵を落としてしまった。
 つまりコイツ、『桂らしき人物が万事屋から出てきた』からではなく『なんか気になる美人が万事屋から出てきた』から、やってきたらしい。よくよく考えれば当然だ、前者なら桂の後を追う。
「なに、オメーああいうのタイプ!? うわやだ、気持ち悪い!」
「……いや、ちょっと聞いてくれよ坂田氏ぃー」
 あ、トッシーだ。まだ残ってんのか。
「ほら、拙者、休みの日にアキバとか行く武士じゃないですかー」
「いや知らねーよ。じゃないですかぁって言われても」
「そこで、時々見かけるんでござるよ、あの美女ー」
 ……そういや、拠点をあっちに移したとか言ってたっけ。うわあ、厄介なことに。つーか、なんで普段から女装してんの?
「……見かけるって、どんな?」
「チラシ配ってるでござるよ、攘夷喫茶とかいう」
 なにやってんだ、あいつうううううう!! 副業!? 副業なの!?
「攘夷戦争中がモチーフの喫茶らしいんだけどー。ほら拙者、真選組な人じゃないですかー、幕府側じゃないですかー、行けないんでござるよー、空気読めないとか言われかねないでござるよー。写真撮影頼んでも断られるしー。なんとかお近づきになれないかなー、と……」
 で、万事屋から出てくるのを見つけた、と。
「……あのね、トッシーくん……」
「あれは、銀ちゃんの幼馴染アルヨ」
 いつの間にやら、居間から出てきた神楽が酢昆布噛み噛み口を挟んできた。
「お、幼馴染で黒髪美人!? 正ヒロイン!?」
「誰が正ヒロインで、副は誰なんだ!? つーか、神楽お前引っ込んでろって……!」
「最近上京してきたヨ。お昼はアキバで、夜はかぶき町でバイトしてるネ。家に帰れないときとか服置いてくヨ。名前はヅラ子言うネ」
「苦労人だな、ヅラ子さん……」
 名前も変だし。なんか変なとこで感動しているトッシーくんを放置し、神楽の頭を小脇に抱え、小声で問い詰める。
(お前、何言ってくれちゃってんのー!?)
(ヅラに身元聞かれたらそう言えって頼まれたヨ。舎弟かばうはリーダーの役目ネ。ひとつの嘘を隠すには、それ以外の真実に紛れさせるのが常套ヨ)
 ……神楽ちゃんがずる賢くなっていく。そして、どんだけ仲いいんだ、こいつら。
「坂田氏、坂田氏ー」
「なんだよ、うっぜーな!」
「つーことは、あの人は坂田氏の彼女ではない?」
 …………。
 彼女、ではないが。
 ふと小脇に抱えたままの神楽を見れば、えらい楽しそうな顔でニヤニヤ笑っていた。
「ただの幼馴染でござるか? ちゅーとかしてない?」
 いや、ちゅーはしてんだけどね。人に言えないような場所とかにもね。
「ヅラ子は銀ちゃんの彼女違うヨ」
「マジでか、神楽氏」
「マジでヨ、グラさん嘘ついたことネーヨ」
 それが嘘だ。
「じゃあさー、坂田氏ー」

from:銀時
『真選組のトッシーくんが、ヅラ子ちゃんとデートしたいとか言っています。どう処分したらいいですか』
from:桂
『日時乞う。』
from:銀時
『バカを言ってはいけません。捕まります』
from:桂
『心配無用。連絡役を依願す。』
from:銀時
『何で???』
from:桂
『見たい。』

 しばしのメールのやり取りの後、銀時は机に突っ伏す。
 土方が妖刀に憑かれたという話は直接にはしていないが、噂が巡って聞き及んでいるのだろう。それを直接見てみたいわけだ。多分、見て、帰って、腹抱えて笑うつもりだ。天然のクセに、嫌いなヤツにだけは無茶苦茶陰険なんだ、こいつ。
「銀ちゃん、メールだと人格変わるタイプネ」
「うお! 人のメール見んな、神楽!」
「つか、ヅラは余計な文字打たな過ぎヨ。よく意味わかんナ、銀ちゃん」
「そうか? こんなもんだろ?」
 これでもひらがなが増えたほうだ。戦争中の連絡文などひどかった。『敵部隊殲滅完了廿日帰還予定』って、ひらがな一文字もねーの。用件のみにも程がある。写経か。
「新八ィー。ヅラがトッシーとデートするってー」
「はぁぁー!? 何言ってんの! 何で!? どうして!?」
「知らねーヨ。男女の駆け引きはブラックボックスヨ」
「いや、女いないじゃん!」
「闇の中であふあふして、おかしなものが生まれるのは同じネ。箱の中身はなんだろなヨ」
「銀さぁーん! また神楽ちゃんが変な言葉をぉーー!」
 子供たちの成長を聞き流しつつ、銀時は額を抑える。
 デート。まあ、ヅラは身持ちが固いし、真選組嫌いは筋金入りだし、腕っぷしでも多串くんに後れを取るわけがない。そっち方面で間違いが起こる危険性は皆無と言ってもよかろう。
「でも心配ですよねえ。桂さん、すぐボロ出しそうになるじゃないですか」
「……あー、まーね……」
「全くヨ。ヅラは私たちがいねーと駄目な子ヨ、マジで」
「エリザベスも、デートって言ったら連れて行けないだろうし……」
「仕方ネーナ。私が付き添いで行ってやるヨ。保護者同伴ネ」
「……いや、やめなよ。沖田さんが出てきて、ひどいことになるのが瞼に浮かぶよ、それ……」
「……いや、神楽の言うことは正しい」
 えー、と新八が不満そうな声を上げる。
 ここは保護者がついていってやらねばあるまい。

「まあ、ダブルデート? そんな旧石器時代の風習がまだ残っていたのねえ」
 貢物のハーゲンダッツを頬張りながら、お妙がおっとりと小首をかしげる。
「そーですよ! 古すぎますよ、ダブルデートなんて! 大体、何で姉上なんですか、銀さん!」
「仕方ねーだろーがよー、他に頼めそうな女いねえじゃねえか。さっちゃん連れてけるか? 九兵衛なんざヅラと同じくらいボケるぞ? 比較的マシなほうだよぉ、このメスゴリラ」
 次の瞬間から、十合ほど長刀と木刀の打ち合いがあったのだが、ここでは割愛しておく。
 つまり、銀時としては『土方と桂を二人きりにすると何が起こるか分からなくて怖い』→『ついていきたい』→『しかし、仮にもデートを取り持った立場として、邪魔は出来ない』→『古きよきダブルデートという建前にしてしまえば、格好はつく』→『土方とも桂とも面識があり、それぞれの事情を理解し、中立で信頼の置ける女性が必要』ということで、お妙に頭を下げにきたわけだ。
「別にかまいませんよ、バイト代いただけるなら」
「……飯奢るって言ってんのに、さらにバイト代まで要求するか、このアマ……」
「それにしても、土方さんがねえ。オカマに求愛って。人を見る目がない人だと思ってたけど極め付きだわ」
「……ひどいですよ、姉上……」
「だってねえ。『あの』ゴリラに心酔してるのよ。鱗が50枚くらいはまってるわね、アレは」
 だから瞳孔開いてるのね、ウフフ。と、艶やかに笑い、空になったハーゲンダッツの容器をことりと座卓に置く。
「いいですよ。他ならぬ銀さんの頼みですもの。協力します」
「ああ、すまねえ。まあ、デート代は多串くんに……」
「お夕飯はしゃぶしゃぶがいいわあ。おうちでやると灰汁が出て大変ですから。最近ね、北通りに近江牛のおいしいところを出すお店が……」
「新八くん、君のお姉さん、怖いよー……」
「……僕は反対しましたからね」


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