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王子様と秋の空 [将棋]
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2007年9月22日

くらッ×3!!! 後編

 前編の続き。


「てきとーに座って。……座るとこねーけど」
 せせこましい八畳ワンルーム。こんなんでも家賃10万するのだ。恐るべし新宿から徒歩圏内。まあ、遠くに住んでタクシー代や交通費掛かったり、早起きしなければいけないことを考えれば、こんなもんかとも思える。早起きが三文の得なら、惰眠は3000円の得だ。うん、妥当。
 床は脱ぎ捨てたスウェットやらカップラーメンの空き容器やら雑誌やらで埋まっている。ヅラ子はそれらの隙間を器用に歩いて、ちょこんとベッドに腰を下ろす。傍らには、全財産らしきでかいスポーツバッグ。
 ……うーん、異様だ。散らかり放題の男の部屋に、埃で薄汚れたロリータファッションのお姫様。男の。なんだろう、この背徳感。まあ、事実、相当背徳なんだけど。
「なんか飲む? つっても、ビールかいちご牛乳くらいしか……」
「すまない」
 冷蔵庫を覗き込んでいた顔を上げれば、ベッドの上のヅラ子が居住まいを正し頭を下げていた。なるほど、世が世であればこの界隈で若と呼ばれている少年だ。妙な風格がある。
「俺の我が儘で貴様に借金を背負わせてしまった。申し訳ない。いつになるかは分からないが、必ず返済を……」
「いーんだよ、おにーさんのお節介なんだから。大体、社長にはもっと金借りてるし。今更、300万や500万増えたところで変わりゃしねーって」
「だが……っ!」
「悪いと思うならサービスしてよ。俺、男の子なんか初めてだし」
 あ、そっちも初めてなのか。気付けばヅラ子は困ったように眉をしかめて俯いている。マズッた。
「……飲む?」
 いちご牛乳のコップを差し出し、金時もベッドに腰を下ろす。一口舐めて、甘、と呟くヅラ子の唇。ワインレッドの口紅が塗られたそれはふっくらと柔らかそうで、十二分に男の欲望を刺激した。
「……まあ、女の子のケツだったらそれなりに知ってるし。男の気持ちいいとこだっててめえで分かってるし。痛くはしねえと思うけど」
「……そうか」
「ヤらずに済ませるってね、多分無理よ。社長、すっげー勘イイから。朝ンなって『三発終わりましたー』って嘘ついたらね、いきなりひん剥かれてケツに指突っ込まれるよ。で、キツキツだったら東京湾だよね」
「……恐ろしい女性だな」
「こっえーよ。伊達に夜兎仕切ってねーよ」
 ヅラ子の横顔を見る。真剣な眼差しでいちご牛乳を、その表面に映る自分の顔を見ていた。
 もしも天人がいなければ、神楽とこの街の覇権を巡って争っていたのは、この少女にしか見えない少年だったはずである。富と快楽を欲しいままにし、暗黒街の名声を、場合によっては本当の名声も手に入れるはずだった。
「金時、と言ったか」
「うん」
「今の俺にはなにもない。組の者共も散り散りになり、行方も分からない。持っているものはこの身一つと、このバッグ程度なものだ」
 ぽす、とスポーツバッグを叩く。中身は着替えやシュラフなのだろう。布の柔らかい音しかしなかった。
「しかし、いつか必ずこの街から天人を排斥し、攘夷組の再興を果たす」
 無茶だ。関東最強の華僑である神楽ですら手をこまねいているものに、例え元攘夷組四代目と言えども今や単なる男娼である少年が立ち向かえるというのか。
「そのためには先ず、夜兎への借りを返し、資金を作り、人を捜さねばならん」
 ヅラ子の膝が金時へ向き直る。細い指がシャツの裾を掴む。
「金時」
 この街には珍しく真っすぐ人の目を見る目が、不安と決意がないまぜになった感情に揺れている。
「俺に、力を貸してくれ」
 白い頬に手を添え、唇を合わせる。小さな口、きれいな歯並び、滑らかで柔らかい舌。ついばむように軽く吸い、深く合わせて中を探る。どこまでも甘ったるいキス。こんな優しいキスをしてやるのはいつ以来だろう。
「ん……」
 ゆっくりと唇を離せば、ぽうっと桃色に染まった小さな顔が視界の中で像を結ぶ。
「……駄目だよ。これからセックスする男相手にそんな肩肘張っちゃ」
「そ、そうか……?」
「リラックスして。怖くないから」
 腰に手を回し強張った背筋をそっと撫でさする。かすかに力が抜けたのを感じ、前から肩に回した手に力を込めればゆっくりとヅラ子に背中がベッドに落ちた。細い身体を包み込むように覆いかぶさる。
 緊張している。全身の筋肉ががちがちになっているのが、イヤでも分かる。
「息、大きくして。吸って、吐いて……そう……」
 真っ赤に染まった顔。きりきりと音がしそうなほどに強張った眉と、硬く閉ざされたまぶたに唇を落とす。薄い胸が深呼吸に上下している。息を吐き切った瞬間が人が一番油断している瞬間。女の心に忍び込むこの仕事でかなり初期に覚えたこと。フリルに包まれた胸がぺたんとしぼんだ瞬間を狙って、薄い貝殻のような耳に声を這わせる。こんなところまで桃色に染まっている。
「いくつ? 聞いてなかったよね」
「……じゅうご」
 思っていた以上に若い。一回りも下か。まあ、そんなものか。
 もう一度、呼吸のリズムを確かめる。吸って、吐いて、吸って、吐いて、
「名前」
「え?」
「名前、なんて呼べばいい? ヅラ子でいい……?」
 吸って、吐いて、吸って、
「こたろう」
「え?」
「かつら……桂、小太郎」
 ヅラ子……小太郎のマスカラの乗った長い睫毛が震え、ゆっくりと開かれる。潤んだ目が金時に縋るように見つめてくる。
「こたろ」
 甘く、名前を呼ぶ。商売で覚えた手管で、商売抜きの感情を込めて。
「かわいいね」
 泣いちゃうくらい気持ちよくしてあげる。耳元で響く金時の声に、小太郎の喉は絞るような声を漏らし、黒いハイソックスに包まれた爪先がきゅうと強張った。


「きーんときー。昼も過ぎたぞ、みのさんの出番も終わったぞ。飯も出来た、起きろ」
 うるさい。もう少し寝かせてくれ、疲れているのだ。大体、そっちのほうが身体は辛かっただろうに何でそんなに元気なんだ、若さかそれが若さか。
 丑三つ時から世のサラリーマンが働き始める時間まで。金時は思う存分、ヅラ子の、小太郎の身体を味わいつくした。だって300万だもん。300万だよ、やりたいこと全部やらなきゃ損じゃん。まあ、それだけ頑張れたのは、金への執着だけじゃないんだけど。
 結論から言うと、むちゃくちゃ気持ちよかった。
 何アレ、何アレ。もちろん女とも全然違うし、その上、女のケツとも全然違ったんですけど。なんかもう、中のふにょふにょ感とか暖かさとか吸い込まれつつも扱き下ろされる感じとか、別次元って感じだった。男のケツって全部そうなの? だったら鞍替えするよ、俺? 明け方の中休み、そう言って小太郎の白くて小ぶりな丸いお尻を撫でたりキスしたりしていたら、もじもじと恥ずかしそうに口を開いた。
 店長(もちろんウリ専バーのだ)に尻を撫でられて、名器に間違いないと言われた、と。
「肉付きが違うとかなんとか……直腸に何の変わりがあるのかと思うのだが……」
 直腸とかゆーな。根がクソ真面目なのか、どうも出てくる言葉が一歩ズレてる。
「稼げる身体だ、と言われた」
 そうだろう、そうだろうともさ。だって、俺、300万払ってよかったと思ったもの。こんな気持ちよくてきれいな身体、誰よりも先に堪能できたなんてそれだけの価値はあったもの。こいつ、普段はいくらなんだろう? お値段によっては通ってしまうかもしれない。
 神楽に借りた金なんか、さっさと返しちまうかもなあ。
 二丁目中の、つまり東京中の美少年大好きオッサンたちが小太郎に夢中になって貢ぎまくって、ついには新宿一帯を牛耳ってしまう、なんてのが、さほど無理ないように思えてきた。だって、そんくらい気持ちよかった。
「この……起きろ! ダメホスト!」
「……ッウゲエ!」
 ドスン、と、金時の腹の上に重いものが落ちてきた。いや、さほど重くはないんだが、勢いつけて乗っかられるとさすがに辛い。
 もそもそと布団から顔を出す。腹の上の小太郎は、しわくちゃになったロリータファッションを脱いで金時のTシャツと買い置きのトランクスを着ており、汗で流れた化粧を落とし、ふわふわ巻き髪もシャワーに濡れてまっすぐに伸びている。すんげーサラサラストレートなのね、こいつ。うらやましい。
 こういう格好だとさすがに少年らしく見える。それでもちょっとスレンダーな女の子だと言い張れば、それで通りそうだが。
 ……こっちのほうが可愛いじゃん。
「人がアフターサービスに飯まで作ってやったのだ。冷めないうちに食え」
「……はぁーい」
 でも、傍若無人なのは変わらないんだよね。ベッドの中じゃあんなに可愛かったのに。初めての感覚にビックリしたのか、ぐすぐす泣きじゃくってイヤイヤナニコレコワイイッチャウイッチャウって金時にすがり付いて、ビクビクイキまくってたのに。うん、ケツだけでイってた。すげーな。初めてで感じるだけでも凄いのに、最後にはトコロテンでイってたよ。超淫乱。ウリが天職じゃねえの、コイツ。
 今は、小生意気そうな顔でぺっとんぺっとん飯よそってるけど。
「いただきます」
「召し上がれ」
 お母さんか。フロアテーブルとは名ばかりのコタツ兼用ちゃぶ台の上に、ハムエッグに冷凍野菜の付け合せ、納豆に味噌汁。白いご飯。旅館の食事みたいだ。
「お疲れ様でした、小太郎くん」
「……その名前で呼ぶな」
「なんでよ」
 あんなに熱烈に名前を呼び合ったじゃない。すっぴんの小太郎くんが気難しげに眉をひん曲げている。
「昨晩は油断した。俺は組を再興するまで敢えて男娼に身をやつし、苦汁を舐める決断を下したのだ。それまで攘夷組四代目桂小太郎の名は封印すると。一介の男娼ヅラ子に過ぎないと。それが俺の決意なのだ。だからその名で呼ぶな」
「……こたろーくん、ほんとに15歳?」
「小太郎じゃない、ヅラ子だ」
 箸を握り締めて熱く志を語る小太郎は、どっからどう見ても昭和のヤクザ映画かサムライ時代劇の登場人物だ。古い。頭の中身が古過ぎる。あんなにえっちな身体してんのに。
「かわいい名前じゃん、こたろーくん」
「小太郎じゃない、ヅラ子だ」
「こーたろーくーん」
「くどい! 小太郎じゃない、ヅラ子だ!」
「じゃあ、ヅラ」
「たった一文字を略すなあ! ヅラじゃない、ヅラ子だ!!」
 ……かンわいぃ?……
 にやける口元を味噌汁の椀で隠す。バレてるだろうけれど。
「飯食ったら、社長んとこ挨拶しにいこっか。初仕事終わりましたよーって」
「うむ、そうだな。寮もまだ入っていないし」
 ふと手が止まる。
「ヅラ、寮入んの?」
「ヅラじゃないというに。情けないことに宿無しだ、雨露しのげるならどこでも構わん」
 不埒なことを思いついてしまった。いや、でもいいアイデアじゃね? 悪くないんじゃね?
「……じゃあさあ、うちに居候すればぁ?」
「このせせこましいゴミ溜めにか?」
「ひどっ! ゴミ溜めは酷くね!? だって社長の寮なんて、あれ、漫喫より酷いよ!? ソファベッドとテレビくらいしかねえよ!? 俺、一時期住んでたもん知ってるもんね! 絶対ここのほうがいいって! 二丁目も近いしさ!」
「だがなあ……家賃は折半か?」
「家賃光熱費は、身体で払ってくだされば結構です」
 小太郎の、ヅラの眉が跳ね上がってひん曲がる。
「……それが目的か」
「よくね? 気持ちよくって現金減らなくて、いいこと尽くめじゃね? な? な?」
 かたりと、ヅラの茶碗と箸が置かれる。
「貴様のいうことにも一理ある」
「だろ? んじゃ、これからよろしくってことで……」
「よろしくな、『銀時』」
 今度は、金時の……銀時の眉が跳ね上がってひん曲がる番だった。
「失礼だとは思ったのだがな。Tシャツを借りようとクローゼットを開けたら見つけた」
 ヅラがごそごそとちゃぶ台の下を探る。引きずり出したのは、黒いナイロン袋に包まれた長物。
「てめ、返せっ……!」
 銀時が伸ばした手は軽く避けられた。身のこなしが軽い。やはり、彼もそれなりの修羅場をくぐって生きてきた男である。
 ヅラの手でナイロン袋が解かれる。中からは出来たのは、薄黒く汚れた……返り血を吸って汚れた白木の鞘。
「二年前の天人と攘夷組の抗争。その中で露払いとして常に先陣に立ち、鬼神のごとき強さを誇った男。……見ていたはずなのだがな。髪の色を変えたな、これを見るまで気付かなかったぞ」
「……こっちが地毛なの。あの頃、抜いてたの」
「意味のないイメチェンだな」
 ヅラがきゅっと唇を引いて笑う。
 ……笑うと、お母さんそっくりになんのね。

「俺のため、この街のため……攘夷組のために力を貸してもらうぞ? 『白夜叉』?」

 マズイのにひっかかった。銀時は箸を放り出し、床にひっくり返った。
「ああ、今は金髪だから……『金色夜叉』か」
「やめてくんない!? 人を貫一お宮みたいに言うのやめてくんない!?」
 だから髪の毛脱色してたの!
 そう言うと、ヅラがけらけらと笑った。目玉だけ動かして確かめる。

 かわいいじゃん。