2007年10月 7日
アキバ系JOY 望郷編
アキバ系設定で銀桂。
特にエロいことしてませんが、エロネタなのでご注意。いわゆるエロコメ。
カチッ、カチッと深夜のスタジオにストップウォッチの音が響く。スタジオったって、普通の1LDKのマンションに机とパソコン詰め込んだだけなんだけどさ。
現在、『JOY』の第二作『これがナースのおしごとですっ!』の音入れ作業中。坂本のバカがいきなり『これから時代はアニメーションじゃ、モーフィングじゃ』とか言い出したもんで、エロシーンにアニメーションが入ることになった。おかげで、物書きの俺までタイムラインやらアフターエフェクトやらなんやら勉強する羽目になって、なかなかの修羅場だった。
まあ、鬼ディレクターのヅラによるスパルタスケジュール管理のおかげで、デスマーチは避けられたんだけど。もう全部の素材は揃ってるし、あとは声優さんの声とBGMとSE入れて、組み合わせてデバッグしてって、順調そのもの。家にこそ帰れてないが、死ぬほど忙しいわけじゃない。発売延期も無しで済みそうだ。……スケジュール管理って大事なのな。
「銀時、セリフが足りん」
「んあ?」
台本とアニメシーンとストップウォッチでカチカチやってたヅラが、ヘッドフォンを外しながらこっちに話しかけてきた。
「サヤカの奉仕ルート、2Aの3シーン目。このままじゃ、アニメの尺にセリフが足りない」
「マジでか。ループでもダメ?」
「ダメだ」
ヅラの座ってるPCまでオフィスチェアのローラーで滑り、ヘッドフォンをつける。再生ボタンを押せば色っぽい喘ぎ声が流れ出す。あー、やっぱさっちゃんいい声してるわ。自分で書いたセリフだけど下半身にキます。これで共演者やスタッフに惚れっぽいとこさえなければ、いい声優なんだけどな。
「……ほんとだ。足りないな」
「高杉がこの絵気に入って、妙に長いアニメにしてしまったからな。どうする? セリフ足すか? 明後日には特典ドラマCDの録音があるから、その時にでも……」
「うーん……ここフェラシーンだし、別にチュパ音足しとけばよくね?」
「それにしたって、さっさんに頼まなければ……」
「いいじゃん。お前入れとけよ」
ヅラの細い眉がひそめられる。コイツ、三日はスタジオ泊まりこんでるくせに、眉も乱れなければ無精ヒゲも生えねえでやんの。男性ホルモン足りなくね?
「貴様、それはユーザーに対する裏切りだぞ?」
「いいって、わかんないって。お前のチュパ音、エロいし」
ほれ。ヅラの口元に指を二本揃えて持っていく。何をいきなり、という桂の表情。その引き結んだ唇を指先で突っつく。柔らかい。
「ほら」
早く舐めろよ、どうせ最後にゃ自分からちゅっちゅ吸い付くんだから。そう仕込んだのは俺なんだけどね。
「ヅラ」
名前を呼んで催促すれば、そっと目を閉じ、恐る恐ると言うように唇を開く。
ちゅる。
桂の唇が薄く見えるのは、血色が悪くて肌の色とほとんど区別がつかないからだ。実際に触れれば、ふっくらと柔らかくて触れるものを包み込む。滑らかな舌が指の腹にぴったりと吸い付く。
「ん……ん……」
ちゅ、ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅ。
「あー……癒されるぅー……」
俺の声にヅラが上目遣いで抗議する。だってすげえ気持ちいい。キーボード叩きまくって酷使された指の凝りが、ヅラの狭くてぬるぬるした口腔接待でほぐされていく。あれじゃね、ハンドマッサージとか行く女ってこの快楽を求めてるんじゃね?
「もっと音立ててしゃぶってみ? よだれ啜って。ちゅっちゅって」
ほら、そんな怒った顔したってさ。結局お前、俺には逆らえないんだから。やらしーことには、すぐくにゃくにゃになっちゃうんだから。
じゅぱっ、じゅぽっ、じゅるるっ、ぢゅるっ、ちゅうぅ……
「そうそう、いい感じ。エロいよぉ、ヅラぁ」
耳まで真っ赤にして、困ったように眉を下げて。こういうときの顔は全然変わらないなあ。
ヅラとは小学校からの幼馴染で、こんな関係になったのは高校から。つっても、初恋とかそんなんじゃなくて。
なにせ高校がすっげー山奥で、近くに目立った女子高もないという完全な男の園だった。ヅラが一見女の子にしか見えないとかすっげー肌が白くて細いとか、そんなもん俺は慣れっこだったんだけど、周囲はそうも行かない。で、まあ、大事な幼馴染が熊みてえな柔道部やガチムチのラグビー部に輪姦されるくらいなら、先に行ったらぁ! みたいな。……自分も性欲の行き場がなくてムラムラしてたのは事実だけど。
ヅラはこう見えて、中身はすげえ硬派で男らしいから、何考えてるんだ気でも違ったかって思いっきり抵抗されたけど。ほらアレですよ。堅物な女教師ほど一度快楽を知るとエロエロになるのと同じ法則ですよ。色々勉強して思いっきりイカせまくってやったら、もうメロメロですよ。お固い高慢ちきな優等生のヅラくんは、銀さんの前じゃフニャフニャにとろけちゃうMっ子に育ちました。
……こういうと、俺らこそ『それなんてエロゲ?』って感じだな……
そんなのも高校のうちだけで、大学に入ってそれなりに女とも付き合える環境になると自然消滅してただの友人に戻ってたんだけど。
また、男しかいない閉鎖環境に逆戻りしてしまった。
別にエロ書いてるから過剰にムラムラするってことはない。逆に、書き上げると悟ったように性欲が抜けていく。普通に人の温もりに飢えてるだけなんだ。
ずっと部屋に篭もってるから出会いなんてないし、イベントで会う声優さんやレイヤーに手を出すと後が面倒だ。外注の女性スタッフで結構かわいい人もいるんだけど、中身が男らしすぎてどうにもならない。
まあ、中身が男らしいのはコイツもそうなんだけど。同じなら、気心知れてたほうがいいじゃん。
……あと、こう言っちゃなんだけど、俺、割りと変態入ってるし。
縛りとか、スパンキングとか、言葉責めとか大好きだし。そういうのに全部ついてきてくれたのって、今んところ、ヅラだけなんだ。
だから、うん。こうなっちゃっても仕方ない。
ちゅぽん。
ヅラの唇から指を引き抜く。とろとろの唾液をまとった指がえらくいやらしい。
「ヅラ……」
「ん……」
ヅラのよだれ塗れの唇を吸う。火照って赤くなると、ぽってりとした本来のエロい唇になる。普段はレバー食えレバーと言いたくなるくらい青白い肌も、内側から熱くなって頬とか指先とか皮膚の薄い部分がシュガーピンクに染まる。
……こういう肌の塗り、エロくていいよな。うちのウリになるんじゃねえかな。ああ、でもそのためには、高杉にこんなエロエロなヅラ見せなきゃいけないのか。
やだな。コスプレくらいならいいけど、こんだけエロいのは銀さんの前だけで充分です。
「……ヅラ、かわいい」
「やっ……! 銀時、待て! 俺はもう三日も風呂に……!」
「あー、だいじょぶだいじょぶ。最近銀さん、そっちのほうにも興味津々です」
「そっちの方って、どっちだぁ!?」
細い首筋に顔を埋めて、思いっきり息を吸い込む。汗臭い。でも、不快な匂いじゃない。コイツは昔からそうだ。据えた汗の臭いというより、甘酸っぱい熟れ過ぎた果物みたいな臭いがする。
どんだけエロいの、コイツ。
「……ヅラァ」
「なんだ……」
「もうダメ。爆発しそう」
ヅラを抱き上げて膝に座らせる。そのままぎゅうと抱きしめて密着させれば、イヤでも分かったのだろう。
ギャア! と悲鳴を上げて、逃げ出そうとする。
「ぎ、銀時! ダメだ、朝までにチェックを終わらせないと……!」
「納品には余裕あるんだろー? 一発でいいから。な?」
「じゃあ、口! 口でしてやるから!」
「いいの? 俺、四日風呂入ってないよ?」
うぐ、とヅラが喉を詰まらせる。
「銀さんはヅラくんがちょっと臭いくらいは逆に興奮しますが、ヅラくんは俺の四日風呂に入ってない濃厚な雄の臭いをまとった肉棒をしゃぶることが出来ますか?」
「……なんで、文章っぽく言う」
「すっごいよ? ほら、俺のって××までちょっと××××んじゃん? そこに××××と××な×××みたいな××が××××××さ。口に咥えたりなんかしたら、×の裏までガツンってくるような××がヅラの××いっぱいに××××って……」
「ちょ、待て貴様、そういうボキャブラリーは仕事で使え!」
「ほら見ろ、ヅラまでキテんじゃん」
ぐいとさらに腰を抱き寄せる。昂ぶった熱同士が擦り合う感覚に、ヅラが身を強張らせた。もう、ここまで来ればチョロイものだ。
「我慢できないだろ? もう、口ん中よだれでいっぱいだろ? 俺のくっさいの頬張って喉奥までガツガツされてたっぷり飲まされたあと、下のお口からも飲みたいってお腹がキュンキュンしちゃってるだろ?」
抱き寄せたまま耳元に囁きかける。耳の裏どころかうなじまで真っ赤にして、しっとり浮き出た汗で後れ毛が肌に張り付いている。そっとそれを剥がしてやると、まるで一番敏感な部分に触れられたようにビクンと身体が跳ねる。
「だから言ったの。一発だけやらせてって。でないと、ヅラがもっとエロい子になっちゃう。どんどんヅラが可愛くなってたまんなくなっちゃう。ヅラともっとエロいことしたくなっちゃう」
「……ぎんと、き……」
湿った、熱帯の空気みたいなヅラの吐息。甘ったるくて切なくて、切羽詰ってて。
……ああ、もうダメだ。
桂さんちのお父さんお母さん、大切な一人息子さんをこんなんにしてごめんなさい。
でも、もう無理です。あんたらの息子、エロすぎます。
「ヅラ……おねだりして? いつもみたいに、俺にどうしてほしいか、おねだりして?」
俺のシャツを掴むヅラの指が震えてる。ドックンドックン大きくなってる心音も、呼吸するたびにわななく唇も、まるで自分のもののように感じる。
早く言えって! 焦らしてるこっちが限界なんだって!
「お、おれ、の……」
「うん、ヅラの?」
「おれの……くちに……ぎんとき、の……おっきくて、あつくて……」
「熱くて? そんだけじゃないよな?」
「く……くさい…お、おち……」
がっちゃん。
「鍵開いちょったきに、上がらせてもろうたぜよ」
……うん、そうね。
つーか、24時間誰かしらいて誰かしら出入りしてるもんで、鍵をかけるという習慣がないんだよね、ここ。すっかり盛り上がって忘れてたわ。
こんなシチュエーションで何の躊躇もなく上がりこんでくるスタッフなんか、一人しかいない。
さっき言った、一見可愛いのに中身が男前過ぎて手のつけようがない外注の女性スタッフ、陸奥だ。
「桂さん、SEのチェック終わったぜよ。朝一で次の録音があるゆうてたきに、すぐ持ってきたんじゃが、お邪魔だったようじゃの」
「え、ああ……そうだな……ありがとう、陸奥殿……」
ヅラが俺と抱き合ったまま、CD-Rを受け取る。そりゃそうだ、まだバリバリ臨戦態勢だもん。沈静化までもうしばらくお待ちください。
椅子の上で密着している俺とヅラを、陸奥はあの冷たい無遠慮な目でじろじろと嘗め回すように睨む。すいません、用終わったらなら帰ってください。なんか、ため息ついてるし。
「仲がよいはええことじゃがの……」
「はあ……なにか、問題でも……」
「わしゃあ、攻めが天然パーマのBLなんざ認めんからのぉ!」
「またそれか、この耽美女ぁあ!!」
前も言われた! ちゅーしてるとこ見つかったときにも言われた!
「当たり前じゃあ! 受けがふわふわの天使のような巻き毛なのは許せる! が、攻めがおんしのようなモジャモジャなのは許せん! 天パでいいのは、褐色の砂漠の王子様だけじゃあ!」
「うっせー! 髪質で性癖は決まらないの! 大体、巻き毛って何よ、お前BLの基準が古いんだよ! 風と木の詩辺りで止まってるだろ!」
「やかましい、ジルベールのどこが悪い! 永遠のラ・マンじゃ、あいつはぁ! ともかく、桂さんと組み合わせるなら、わしゃあ高杉さんしか認めんぞ! おんしゃあ、それ以上チュッチュしたいならストパーかけてから出直せ、モジャモジャ! バーカバーカ!」
「うるせー! お前こそ好きしょくらいやってから出直せ、バーカバーカ!」
没ラフとか投げつけつつ、陸奥を追い出す。普段は実に冷静で有能な女なのだが、趣味が絡むととたんに感情的になるのがタチが悪い。しかも、どっちかっていうと桂高なんだってさ。しらねーよ、何で顔見知りの男でそういう妄想できるんだよ、わかんねーよ。
俺とヅラは騒ぎの中ですっかりお互い萎えて、散乱した紙を拾い集めたり、陸奥の持ってきたデータを確認したり……
「なあ、ヅラぁ」
「……ヅラじゃない、桂だ」
いまさら言うか。
「しないの?」
「先にこれのチェックをする」
お仕事モードに入ってしまった。こうなると、ヅラはカッチカチだ。こうなると、もう一度持ち込むのは至難の業だ。
「どんくらいかかる?」
「一時間ほどかな。そうすれば……」
ちら、と時計を見上げた。
「一駅先にスーパー銭湯が出来ただろう。あれの早朝営業が始まるから、行こう」
ほんのりとヅラの耳が赤い。それは、つまり、
「……お風呂でヅラくんが舐めてくれると?」
「舐めない!」
おお、顔が真っ赤だ。
「やりたかったなー、匂いプレイ。作風に幅が出ると思うんだけどなー」
「……本当か?」
クソ真面目故のヅラのズレっぷりが出てきた。
「本当に、そのほうが仕事に役立つなら……」
「んー、三作目、ラブコメもので告知打ってるじゃん?」
「ああ、だが……」
「ラブコメでさすがに匂いプレイは無しだと思うんだわ。でさ、これが売れたら、四作目は女医ものかお姫様調教ものかで行こうって坂本と話してるからさ……」
その時、しよっか?
俺の耳打ちに、こくん、と頷く。かわいい。
「その時は、一週間にトライしてみようぜ」
「やめとけ。貴様のモジャモジャ頭に変な虫がわく」
だから、なんで天パに厳しいの、うちのスタッフは。
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