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2007年10月26日

ステーシーの美術・おもちゃやめぐり

 銀桂。

※要注意内容です。


 鬱、グロ、死にネタ、女体化、パラレル、全ての要素を含みます。
 大槻ケンヂ『ステーシー-少女ゾンビ再殺談』、及び筋肉少女帯『ステーシーの美術』に登場する架空のモンスター『ステーシー』が元ネタの作品となります。元ネタの設定が何の説明もなく出てくるのでお気をつけください。
 また、『ステーシー』の内容ネタバレになりますのでご注意ください。

 要は、私が『ステーシー』が大好き過ぎて書いたものです。

 高桂編『再殺部隊』、銀桂編『おもちゃやめぐり』、坂桂編『リテイク』。
 出来るだけ、順番に読むことを推奨。『ステーシー』を知らないという方向けの設定はこちら



 貴様に俺の再殺の権利をやろう。
 とんでもない、そんなものはいらない。そんなものは再殺部隊に任せておけばいいんだ。なんで俺がお前を殺さなければならないんだ。
 貴様がよい。俺を殺し直すのは貴様がよい。
 いやだと言っているのに。
 貴様ならきっと、思い切りよくグッチャグチャに切り刻んでくれるだろう。165分割どころかミンチになるくらいに。いっそその方が清清しい。晋助は駄目だ。あいつは神経質なところがあるから、きっと俺をきっちり165分割しようと変に細かく慎重に作業して、挙句に失敗してしまうだろう。あれは昔からそういう子だから。そうしたら俺はきっと晋助を傷つけてしまうだろう。だから貴様がやれ。
 なんだ、結局はいつもの過保護なんじゃないか。
 そうだよ、俺は晋助に俺を殺させたくないのだよ。そうしたら、あの子は自分の首を吊ってしまうだろうから。
 桂はふんわりと微笑んだ。ニアデスハピネスの陽気に浮かれたあけすけな笑顔ではなく、ちょっと困った優しい笑顔で。もしかしたら、桂はステーシーにならないのかもしれない。桂がなるのはもっと別の何かなのかもしれない。そう思いたかった。
 銀時なら大丈夫だろう。強いから。貴様は、俺がいなくとも先生がいなくとも、誰が死んでも誰が食われても誰が人を食っても、貴様自身でいることが出来るだろう。
 死なないでくれ。余りにも身勝手な言葉が唇から零れ落ちそうでいて出てこない。歯医者で麻酔をかけられたあとのように感覚の伴わない唇を、あうあうと小さく開閉する。
 貴様がいい。貴様なら、俺を殺しても狂ったりしない。自分自身のままで、ちゃんと俺を殺してくれるだろう。俺が死んで、俺が俺でなくなって、ふらふらと歩いて誰かを食いだす前にきちんと殺し直してくれるだろう。
 それが自分の勝手な思い込みなのではないかという危惧すら桂にはない。ふわふわした地に足のつかぬ笑顔で、うふふうふふふと笑いながら銀時の裸の胸に額を擦り付ける。
 なんだ、いやに渋りおって。俺の処女まで奪っておきながら勝手だぞ?
 自らの股間に手を突っ込み、血に汚れた指を恥じらいもなく、ほら、と差し出す。桂を穢れない身体のまま死なせてやりたいとも思った。神に捧げられる乙女のように一点の曇りもない美しいままで死なせてやろうかとも思った。きっとあいつはそうする。高杉はそう思っている。無理だった。桂を理不尽ななにかに奪われるのが我慢ならなかった。全て奪われる前に手に入れてしまいたかった。ニアデスハピネスの笑顔のまま痛みに眉を顰めることもなく桂は銀時を受け入れ、中に注がれた精液を慈しむように腹を撫で、これで孕んだらどうなるのだろうな妊婦のステーシーなど聞いたことがないがとあっけらかんと言った。
 殺しておくれ、銀時。俺が死んだら、もう一度殺しておくれ。貴様がいい。貴様でなければいやだ。
 幼子のように銀時の身体にまとわりつき、にこにこと笑いながら桂が何度も繰り返す。その艶やかな髪を撫で暖かな肌を吸い、細い身体を抱きしめて泣く。全く正直に言えば、銀時は桂のその信頼に応えてやれる自信などこれっぽっちもなかった。桂が死んでその身体がもう一度起き上がれば、きっと自分は狂喜して抱きしめようとうかつにも駆け寄り喉笛に食いつかれ命を落とすだろう。もしくは桂の身体を165もの肉片に切り刻むというおぞましい行為から逃げようと再殺部隊へ電話を掛けるだろう。嬉しそうに幸せそうに殺してくれ殺してくれと囁く桂の恋慕に応えてやれる自信が銀時にはさっぱりなかった。きっとお前が死んでその脳の動きが止まれば、お前には何も分からなくなるのをいいことに俺は卑怯にも逃げ出すのだ。
 だから桂、俺はお前がまだ死なないうちに165分割の肉片にしてやろうと思う。
 お前との約束を守るために、俺がお前を裏切らないために、お前の脳がまだゆっくりとでも動いているうちに殺してやろうと思う。そうすればお前は俺に切り刻まれながら笑ってくれるだろう。俺が最後までお前を愛していたと、お前の言葉全てに全力で応えようとしたのだと認識しながらお前は死んで、ステーシーにもならず人のまま、気高く美しい俺の愛した桂のままでいられるのだ。
 納戸に斧があったはずだ。明日一緒に探そう。見つからなければ、一緒にホームセンターにチェーンソーを買いに行こう。出来るだけお前を細かく潰してやりたい。俺にはいちいち数えながらお前を切り刻むなど出来ないだろうから、己と世界への怨嗟と怒りのまま、むやみやたらに得物を振り下ろすことしか出来ないだろうから可能な限りお前はぐちゃぐちゃに潰れたほうがよいのだ。万に一つもステーシーなどにならぬように。
 明日は晴れる日だ。暑くもなく寒くもなく風はさわやかで心地よい季節だ。愛しい人を殺すのにはもってこいの日だ。
 明日は一緒に納戸で斧を探して、無かったらホームセンターに買い物に行って、駅前で一緒にラーメンを食べて、散歩をしてあのケーキ屋でおやつを食べて、公園に行ってお前を叩き潰そう。そしてお前に俺の気持ちを全て伝えよう。大好きだ愛している俺はずっとお前のものでお前はずっと俺のものだ。きっとお前は笑ってくれる。ニアデスハピネスの陽気に浮かれたあけすけな笑顔でなく、ちょっと困った優しい笑顔で笑ってくれる。
 明日は晴れる日だ。さよならするにはとてもいい日だ。


 ありがとう。さようなら。大好きだ。