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2008年1月 8日

私を月まで連れてって ?白?

 銀桂、正月ネタ。坂桂要素アリ。
 『プリンセス・メィカー』と地続き。後編アリ。


 エリザベス、お年玉が届いたぞ。
 いつになく弾んだ声に振り返れば、屠蘇の酒精に頬を染めた主がにこにこと大きな包みを抱えて座敷に入ってきた。
『お年玉はもうもらいました』
「それは俺からのだろう。これはな、ほら、あれだ。坂本からだ」
 懐かしかろう? そう問われるが、エリザベスはあのもっさりした毛玉を『地球までの連絡船の船長』程度にしか認識していなかった。桂はお前は坂本からの預かり物なのだからと、なにくれ手紙や昔の写真などを見せてくれるが、ほとんど興味が無い。
「おお、これは洒落ている」
 がさごそを紙包みを開けて現れたのは、真っ白い布の固まり。桂が持ち上げ開けば、それは帯のように長細かった。
「エリザベス、首を出せ」
 言われるままに首(っぽいところ)を傾けると、桂が抱き着くように腕を回す。ははあ、なるほど。首が終われば、今度は手に。そして、耳(の辺り)に。
「樫宮星の珍しい動物の毛だそうだ。暖かいか?」
 マフラーに手袋、イヤーマフ。こくりと頷けば、ほら俺とお揃いだともうワンセットを手ににこにこと笑う。
 どう考えても、そちらがメインだと思うが。


『あけましておめでとうございます』
「……はい、おめでとー」
 相変わらずめでたさのかけらもない死んだ魚の目を擦りながら、万事屋の主が出迎えた。大方、炬燵で寝正月でもしていたのだろう。怠惰な男だ。
「あ、エリザベス先輩。あけましておめでとうございます。どうしたんです、今日は一人で……」
「エリー! おめでとヨー! ヅラはどしたネ、あいつからお年玉貰ってないヨ、どこいるヨ、利息はトイチだぞコルァ」
 早速神楽がエリザベスにじゃれつき、新八は足拭きマットを用意する。それを尻目に銀時が廊下の奥へ引っ込む。
「あー、だめだ。正月ボケだわ。こいつだってわかんなかった。新八ぃ、俺、もうちょっと寝るわ」
「んなこと言って、元旦から寝っぱなしでしょーが、あんた! 寝てるから正月ボケになるんだよ! で、エリザベス先輩。桂さんは……」
『お年玉を持ってきた』
 そのまま上がり込んだエリザベスは応接セットに陣取り、新八の出す茶を待ち、堂々たる存在感そのものの態度で銀時や神楽が席に着くのを待つ。なんでこんなに偉そうなんだ。銀時が小さくため息をついた瞬間、
 あんが、と大きくクチバシを開き、ばさばさと大量の紙をテーブルの上に吐き出す。
「……なんじゃこりゃ」
「あー、あれじゃないですか。年賀状とか暑中見舞いとか……最近はまとめてグリーティングカードって言うらしいですけど」
 書簡というほど長ったらしくもなく、一筆というほど簡素でもない。趣向を凝らした装飾の合間に洒落たペン字で挨拶がかかれた二つ折のカードが山と積まれた。
「全部ヅラ宛てネ」
『坂本さんからのものだ』
 プラカードの文字に、ぴたりと居間の空気が止まる。
『ちなみにこのマフラーもそうだ。桂さんとお揃いだ』
「……あ、そう」
『羨ましいか』
「どっちの意味で!? 毛玉からもらったってこと!? それとも、ヅラとお揃いってこと!?」
「後者だろ」
「後者アル」
『いまさら何を』
「うらやましくなんかありませんー! バケモノをうらやむ理由なんかこれっぽっちもありませんー!」
『まあ、そういきり立つな、白いの』
「お前が言うか! お前が人間様を白いの呼ばわりするか! 俺がお前に白いの呼ばわりされなきゃならん理由を述べろ!」
「まあ、落ち着いてくださいよ、白いのさん」
「余裕ナイの丸分かりネ、白いのちゃん」
「ええー! ちょっとー! 何? 俺、これよりヒエラルキー低いの!?」
 銀時が騒ぐ間も、新八と神楽はグリーティングカードを開いては中を確かめ、開いては確かめを繰り返している。
「本当に小まめに送ってきてるんですね……」
「正月のカウントダウンとかしてるアルヨ。なんだこのバカップル。ウゼェ」
「……暇なんだろ、あいつ。いーねー、ボンボンは」
 じとり。二人の視線を避けようと首を回せば、今度はエリザベスと目が合う。……じっと見ないでくれ、別の次元に連れて行かれそうになる。視線の行き場がなく、仕方なしに銀時は俯いた。
『本題はこれだ』
 あが。エリザベスはもう一度口の中からカードを取り出す。真新しい、紅白に水引のついたカード。
『今朝、お年玉と一緒に届いた。桂さんには悪いが、借りてきた』
「……へー……」
 ぺらりと開く。
 正月に地球に戻ります。二日の夜、灘屋にて。
「コマすつもりアル」
「コマしますね」
『コマされる』
「不吉なこと言わないでくれるー!?」
 抵抗の声も一人では空しい。
「今夜、ヅラが浮気しますアル」
「あったね、そんな話……」
『ネット出版ブームも落ち着いた感がある』
「今はあれアル。ケータイショーセツネ。レイプと妊娠とホストと死に至る病でじょしちゅーがくせーのハートをガッチリキャッチヨ!」
「それに援助交際が加われば、ちょっと前の村上龍と大差ないんだけどね」
『いつの時代も若者の刹那主義は変わらないということか』
「こないだ姉御に借りた本も大概だったアルヨ。ケンカしてるお隣さん同士のバカ息子とバカ娘が恋に落ちた挙句、二、三日で結婚式挙げて、連絡ミスでしなくていい心中してたアル。若者には過去も未来もなく、今しかねーってのがよく分かったアル」
「うおぉーい! ロミオとジュリエットをそんなふうに言うもんじゃねえよ! 沙翁の代表作だぞ、一応!」
『桂さんは、八百屋お七は愚かにもほどがあることにこそ主題があるのだと言っていた。きっとその話もそうだ』
「いいやー、違うネ。恋に狂うのと周りが見えなくなるのは別問題ヨ。恋い焦がれる余り全てを失ってもいいアルって何もかも投げ出すのがお七ヨ。恋に浮かれる余り自分たちの不幸に酔っちまうのがロミジュリヨ。全然違うアル。エリーは恋愛が分かってねーなー」
「まあ、日本はヤンデレ文化だって言うよね。安珍清姫とか」
『イザナギイザナミからしてそうだろう』
「……ねえ、君ら、銀さん放っておいてなんの話してるの?」
「ナニヨ、分かんねーカ、銀ちゃん」
「だから、同じ恋愛脳でKYになるなら、自滅覚悟で突っ走るのと、来るべき崩壊に酔ってナルシストになるのと、どっちがいいかって……」
『そういう話だ』
 じとーり。
 三者の視線が、銀時の心の奥底に突き刺さる。
「……そういう話だったの?」
 こっくり。


 日が暮れる少し前から、ちらほらと白いものが舞い始めた。これも初雪というのだろうか。桂は新品の防寒具を身にまとい、番傘を片手に玄関を開ける。まだ傘を差すほどの降りではないが、肩に積もるようになってからでは遅い。既に玄関先の石畳はうっすらと雪を被っている。
 かしゃん。竹細工の小気味よい音と共に傘を開き、戸締まりを確認し、門を曲がれば気の早い雪だるまが、
 否、違う。
「……なにをしている、銀時」
 雪だるまではなく、板塀に背中をつけて座り込んでいる白いのだった。
 いつもは片袖を落としている着流しを両肩に上げ、さらに肩から顔の下半分に至るまで白布をぐるぐると巻き付けている。む、と桂が眉を曲げた。
「貴様、それはエリザベスのマフラーだぞ。どうしたんだ、取り上げたのではないだろうな」
「……ちっげーよ、借りたんだよ」
 銀時が腰を上げると、肩や頭からばさばさと雪が落ちた。凍りついた一部は落ちずにこびりついており、それも桂の眉を曲げる一因になる。
「いつからこんなところにいた。風邪を引くぞ」
 そっと手を伸ばし、凍った髪を指でしごいてやる。ぽろぽろと氷のかけらが落ちる。
「ヅラが本当にお出掛けすんのかなー、って。見張ってた」
 桂の手の動きが止まる。相変わらずの死んだ魚の目、その上、マフラーで顔を隠している銀時の表情がさっぱりと読めず、躊躇いがそのまま指に出てしまう。
「お出掛け?」
「……ああ」
「ついてっていい?」
「……知らん」
「ついてっちゃ、ダメ?」
 表情が読めない。いつもなら、銀時が何を企んでいるかなど手に取るように分かるのに。ぎゅっと唇を噛んだ。
「俺と一緒じゃイヤ?」
「嫌じゃない」
「じゃあ、いいじゃん」
 銀時は首元に手をかけ、ずるりずるりとマフラーを抜き取る。何をするつもりかと桂が見ているうちにそれは大きく広げられ、
「じゃ、いこっか」
 二人の首をつなぐように巻き直された。
「……お前の考えることは、肝心なところがよく分からん」
「うん、俺もよく分かんねえ」
 まあ、いいじゃないの。初デートってことで。
 番傘の下に共に入り込み、新雪を踏むぎゅむという音を立てて歩きだす。

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