2007年05月17日
三角関係
アビは江戸元が好きで、一緒にいたいし、守ってあげたいとも思ってる。けどやっぱり、姉のことが忘れられないし、何より自分は山の民だから、ずっと一緒にいられない。姉や山への思いを全部捨てて江戸元の側にいたいけど、そうしたら自分は何者でもなくなるんじゃないか。そこまでした後で、今の自分が保てるのか、という不安がある。
けど、往さんなら里の人間だし、大人だし、なにより江戸元を変えた人だから、自分より江戸元の側にいるのに相応しいんじゃないか。江戸元も往さんを特別に思ってるみたいだし、往さんもまんざらでもないっぽいし、自分としても往さんは信頼できる人だし。
だからって、自分が江戸元をあきらめられるかというと、非常に困る。江戸元大好き。
ああ、江戸元が俺のお姉ちゃんだったらいいのに、だったらこんなに悩まないのに。お嫁に行ってもいいけど、辛くなったら戻ってきてとか言えるのに。何で俺のお姉ちゃんが江戸元じゃないんだろうなあああ。
往さんは、自分に甘えてくる江戸元を可愛いと思ってるし、神様も何もかも失った江戸元が自分を拠りどころにしているというなら、出来る限りなってやりたいと思ってる。
けど、未だ妄想のお友達を精神安定剤に使ってるふわふわした人間が、人一人の幸せに責任持ってやることなんか出来ないし、事実、ロリ一人幸せには出来なかったわけだし、ロリよりよっぽど複雑で難しい江戸元が自分の手に負えるとは到底思えない。
それに自分は江戸元より早く死ぬし。アトルは成長期だから、近い将来に自立できるかもしれないけど、27歳の大人が今から自分を頼りにして、それにいつまで責任持ってやれるのかと思うと、途中でほったらかしちゃうこと確実。
でもアビなら年頃は同じだし、地に足つけて生きてるし、何より江戸元が一番大事っぽいし、自分よりよっぽど江戸元の側にいるに相応しい。
だからって、あれほどまでに自分を頼りにしてる人間を切り捨てて、別の誰かに押し付けるって、それって男として、いや人間としてどうよ。せめて出来る限りのことだけでもやるべきじゃないか? でも、深入りしすぎると怖いし、でもでもでもでも。
で、江戸元は、実のところ、未だに朱松様のことが忘れられない。
何で自分は朱松様と一緒に死んであげなかったんだろう、朱松様のことを理解してあげられるのは自分だけだったのに、あの人の孤独を癒してあげられるのは自分だけだったのに。でも、アビは可愛くて一緒にいたいし、往さんは自分に新しい世界を見せてくれたし、だから、もっと別の世界を見てみたかった、生きてみたかった。なにより、朱松様を妄想世界から解き放ってあげたかった。
じゃあ、自分は朱松様と一緒に死んであげるべきだったのに。ワガママで一人生き残ったんだ、自分が朱松様を突き落としたんだ、ごめんなさいごめんなさい、こんな自分は幸せになんかなれないんだ、一人ぼっちで死んじゃえばいいんだ、死んじゃえ死んじゃえ。ああ、でも自分がいなくなったらアビが一人ぼっちになっちゃう、往さんが助けてくれたことが無駄になっちゃう、どうしようどうしよう。と、内心一人で鬱スパイラルに落下中。表面には出さないだけで。
……うちの三角関係は、こんなジレンマに陥ってるっぽい。
朱松様はなんだかんだと、『俺について来い、そうすれば絶対幸せにしてやるから! 根拠はないけど! あるにはあるけど、自分の妄想だけど!』と言い切ってくれるいい男だったんだなあ……
いや、人はそんくらい無駄な自信に満ち溢れてたほうがいいですよ……
- by まつえー
- at 16:11
- in 戯言
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