3巻は、ハイネ戦死直後~アスラン脱走まで。
2巻のラストは、シンを庇う形でハイネがガイアにやられたのですが、3巻はそのショックと怒りをトイレ掃除にぶつけるシンから始まります。これがいい。『仲間が自分を庇う形で殺された』『自分は何も出来なかった』というショックを、『何かせずにはいられない』という形であらわしている。
ミネルバvsオーブ戦は、ラストがアスラン撃墜だけでなく、ステラ撃墜まで一緒にまとめられています。
そして、シンがステラを逃がす前に、マユとのオリジナルエピソードが挿入。『マユが昔、川で溺れた時、シンは自分が溺れることが怖くて助けられなかった』というエピソードなのですが、これによって『自分の臆病さで、後悔したくない』というシンの動機付けがされ、『銃殺覚悟で、ステラを逃がす』という行動に無理なく繋がってます。
この辺りは高山氏も丁寧に描きたかったのか、ステラを運ぶ最中、ルナマリアと遭遇するというエピソードも挿入。『そんなことをしたら銃殺だ』『ステラはハイネの敵であり、他にもたくさんの仲間が彼女に殺されている』という読者の代弁であるルナマリアのセリフに対し、『銃殺は覚悟の上』『敵であれ、見殺しには出来ない』というシンの言葉で、それなりの回答を提示。うーん、上手い展開だ。
ステラをネオに返すシーンでは、貝殻をステラに渡さず、シンが持ち続ける形に改変。この漫画では、ステラはこの時点で記憶を取り戻してないし、シン側にステラの思い出がなくなるのはアニメでも納得いかないシーンだったので、貝殻をシンが持つことで、より二人の間に恋愛っぽさが増したと思う。
デストロイに対するインパルス出撃は、『シンに対する処罰は確定されていないが、緊急事態故やむなく』という形に。うむ、シンの変な思い上がりもなくなるし、いい感じだ。
デストロイ戦の最中に、プラント最高評議会のシーンが挿入。デストロイの圧倒的戦力に撤退を提案する議員に、議長が『これを撃退し、人類を守ることがザフトの正義』と決断。さらに現場の兵士が『司令部はなにを考えているんだ』というシーンを交えることで、『議長の言っていることはもっともだが、何か怪しい』という印象をうまくアピール。
ステラ死亡シーンは、シンの呼びかけ→ステラ正気に→ダメージのため、デストロイの主砲発射を停止出来ず→それに気付かないシンの前にキラが割り入り、やむなくコクピットを攻撃という形に改編。アニメだと、完全にフリーダムがいらぬちょっかいかけシンが逆恨みという形だったのが、キラ、シン、どちらにも理があり、ステラの死も納得いく形に。ここが一番上手いところだと思う。
さらに、間断をおかず、そのままインパルスvsフリーダム戦へ。アスランは、キラキラ言ってるだけでなく、あくまで『シンには、キラと戦う理由はない。作戦外の戦闘は軍規違反であり、勝手な行動をするんじゃない』ということを呼びかけるために、量産機を借りて割り入る、という形。シンが軍規違反を犯しているわけですが、すでにステラの事件で『軍規よりも己の正義を優先する』というキャラ付けは出来ているため、不快と言うことはない。
さらに、アスラン呼びかけ後の戦闘中にAA撃墜命令が出されることで、アスランの行動を背信行為ではなくし、シンの行動に問題点をなくしています。
と、まあ、アニメの不満なところをすっきりと納得行く形に纏め上げ、それでもプロットは変えていないという、神業的コミカライズ。高山先生は天才やで。
これが原作だったらよかったのに……orz
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